寿命1000年のDVDが開発される

 PCに関連するメディアが磁気メディアから光学メディアに変わってきてから早15年以上、すでにCD、DVD、Blu-rayと変わってきている。そのDVDの寿命が1000年のものが開発されたという、半ばネタのような話がある。

「寿命1000年」うたうDVD、米新興企業が開発(ITmedia)
300年データを保つゴールドディスク(2006.4.19)

 アナログからデジタルに移行するようになってから、アナログだとテープのようなメディアの経年劣化が避けられなかった。光学メディアにしても半永久的保存というわけでなく、DVDにしろ劣化して寿命は10年ほどだという。しかしデジタルデータはコピーしてもデータの劣化は起きないことから(画像圧縮による劣化はともかく)、コピーを続けていれば長期保存は可能であるということにされている。しかし、メディアとなるDVDそのものが高温にも紫外線に対しても劣化しない「DiamonDisc」を開発したという。ちなみに寿命300年と称するKODAKのCD-Rもあるらしい。


 300年にしろ、1000年にしろ、時間が長すぎて直接的には確認のしようもないが、果たして現在のデータをそれだけ長期に保存する意味はどれだけあるのだろうかと、空想してしまう。昔(今でもあるか)、未来へのメッセージを、といってもせいぜい数10年後だろうが、地中に埋めておくというような話もあった。自分で将来掘り返してしまえば、単なる思い出に過ぎないが、時代を超えて誰かがそれを発見すれば、今の時代の考証に利用されるかもしれないという期待がある。


 同じように1000年寿命があるといっても、物理的にダメージを受ければ意味がないので、どこかに重要なデータとして長期保存しておくことになるだろうか。昔の機密文書がどこかの資料館の倉庫にマイクロフィルムか何かで保存されているようなものである。そのデータを果たして1000年と言わないまでも、何100年後かに必要とされることがあるかどうかである。


 現代はコンピュータの進歩によって、100年前などと比べて圧倒的に情報量が増えた。しかし100年後に必要とされる現代の情報というのは100年前の情報量と、たいした変わらないのではないかと、皮肉めいて考えてしまう。


 そんなことを考えているうちに、そういえばテレビ局で使っていたテープがまだ高価だった時代に、テレビ局でテレビ番組を収録したテープは、放送が終わったら他の番組の収録に「上書き」して転用されていたという話を思い出した。そのために、NHKの初期の頃の大河ドラマの収録テープさえ、NHKにも残っていないという。視聴者がテレビ番組を録画しているという時代ではないから、もはや全編を復活させることは不可能らしい。失われた中には、故・緒形拳の出世作となった「太閤記」も含まれているという。テープが高価という以前に、そもそも放送番組を未来に残すという発想そのものがなかった時代といえるのかもしれない。


 そう考えれば、やはり何百年かは詳細な歴史を残すという作業が必要な分野は存在するのだろう。世界遺産ではないが、文化的なもので時代が過ぎるほど価値が出てくるものはありそうである。ただ、果たしてその媒体がDVDかというと、違うだろうという気にはなる。ネット時代が進んでくると、データを長期保存する場所や媒体はどうなるか。「すべてはクラウドの中に半永久的に保存されます」と言われたとしたら、文字通り雲をつかむような話になりそうである。