スーパーコンピュータ開発予算復活に可能性

 世間的に話題となっている国家事業の「仕分け」で予算削減の対象に入れられたスーパーコンピュータ開発の予算が復活される可能性が出てきたとのことである。菅副総理が示唆、というか国家戦略担当相および科学技術担当相でもあるらしい。理科系出身者でもあるからかもしれない。

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 公開の「仕分け」ということ自体、前代未聞のことだったが、まさかスーパーコンピュータ開発がこれほど世間の話題になるとは、自分でもブログを書く前は予想もしていなかった。宇宙ロケットや毛利さんの日本未来科学館などより、はるかに世間の注目を浴びることはなかったのが、政権交代の思わぬ副産物として良くも悪くも注目されることになったのだから、怪我の功名ということにもなるかもしれない。仕分けられて担当者が捨てぜりふに近いことを言っていた文部科学省などは「国民目線」での巻き返し?のためか、ご意見募集のページまで立ち上げている。


 「2位ではだめなのか」のような言葉だけが切り取られて、何かスーパーコンピュータの話が政治批判のための格好のダシにされているようで残念ではある。おそらくこんな話が出る前までは、スーパーコンピュータとは何なのかさえおよそ縁のなかった人までスーパーコンピュータが国家にとって重要だと声高に力説しているのは、何か滑稽でさえある。本当に国家にとってそれほど重要だというのなら、国を代表する企業であるはずのNEC、日立がプロジェクト途中で降りたことなどの方が、言語道断の姿勢だと言えてしまうだろう。しかし、それはホンダやトヨタがF1から撤退したことと同様に見えるのである。企業にとっては、科学技術立国という以前に、企業の技術力をアピールするシンボルのような存在に過ぎないのだろう。スーパーコンピュータを使った科学技術の進歩とは、また別な問題ではある。


 予算削減前の現在でも、日本のスーパーコンピュータは最高の「地球シミュレータ」で31位が実情となっている。2002年当時で2位のIBMマシンに5倍の差をつけてトップを獲得したというが、今やその面影はない。それだけ世界での開発の進歩が速いということだろうが、予算云々の問題以前に、すでにスーパーコンピュータといっても、かつての日本スタイルのような巨艦主義ではなくなっているということではないか。想像に過ぎないが、スーパーコンピュータ(それも日立のもの)に深い縁のあるはずの金田教授などが反対の立場に回ったのも、現在の開発体制の見直しを求めたからではないかと思える。現在開発中の京速計算機はともかく、次の世代は全く発想を変えた方がよいのかもしれない。いつも大企業に無条件に開発資金を出すのでなく、アイデアを出せる人を評価し支援して、それを企業がバックアップして実現していけばいいようにも思える。そういう長期的方針や戦略を示すのは、国家戦略担当相の仕事になるのだろうか。