平山、ハットトリックで代表デビュー

 やはり平山は怪物だった。期待されながらも、ここにきてやっとの日本代表招集で、事実上W杯メンバーへの最後のアピールの場のはずだった。しかし、それが現在テロ不安があり暮れまで開催中止も検討されたイエメンでの試合だった。格下のイエメン相手とはいえ、代表デビュー戦でのハットトリックは80年ぶりだという。途中出場での達成と当時とのレベル差を考えれば、事実上史上初の快挙といってもいいだろう。

平山80年ぶり3発デビュー/アジア杯予選(nikkansports.com)
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 平山のことを期待を込めて書いたのは、もうずいぶん以前のことだった。ちょうどオランダから帰国してFC東京に入団したのはいいが、あまりパッとしない日々が続いていた頃だった。その後、北京五輪の中心選手になるかと思いきや、なんと五輪代表からも落選、W杯に向けてのA代表にも全くお呼びがかからずに、すっかり忘れ去られた存在にさえなっていたように思えた。北京五輪のサッカーは平山が代表になれなかっただけで、半ば興味を失ったくらいだった。A代表の方も、イタリアで成長した年下の森本に先を越されるほどだった。


 もともと身長ばかりでなく、物事にこだわらないおおらかさというか、精神的に大物感を持ち合わせていると思っていた。ここ数年でどういう心境の変化があったのかはわからないが、数日前の記事を読んで、久しぶりに腹の据わった平山の大物ぶりにに感心した。テロの不安のある中での試合、文字通りの「敵地」での「命懸けの試合」ともいえた。厳戒警備の中、選手も決して心穏やかではなかったはずだが、インタビューに平山は淡々と「サッカーで死ねたら本望です」と答えたのだという。そしてこのハットトリックの大ブレイクである。どこまで本気なのか、伸びしろがあるのかが計り知れない男である。ただ、大物といわれる人間に共通することは、必ずここ一番の活躍の舞台が回ってくるということである。今回のチャンスも、そういう星の下にあったという気がする。技術や才能だけではない「何かをもっている」と人に感じさせるものがあるのである。


 とはいえ、ついに怪物が目を覚ましたという印象を多くの人が与えたことで、森本とともにW杯への期待が大いに高まったといえるだろう。日本代表といえば、長い間、点が取れないという印象が定着していたが、この2人でその常識も打ち破ってほしい。