RSA暗号から楕円曲線暗号へ

 暗号も、早くも次世代のものへと移行することが検討されているようだ。公開鍵暗号の代表格であるRSA暗号に代わり、楕円曲線暗号が有力視されている。これまであまり両者の暗号としての強度の比較は定量的にはなされてこなかったようだが、ここにきて富士通の実験によれば、楕円曲線暗号の方がRSA暗号の数千倍の強度があると考えられるとのことである。

富士通など、楕円曲線暗号とRSA暗号の強度比較基準策定--最適な選択が可能に(CNET Japan)
楕円曲線暗号、RSA暗号との相対強度は数千倍、富士通が解読実験(INTERNET Watch)

 数千倍という大きさがコンピュータにとっては、あるいは暗号にとってはどれだけ大きいのかはイメージはしにくいが、安全のためのビット数が増えているRSA暗号と同じ強度ならば、より少ないビット数で表されるというメリットがある。このままRSA暗号の桁数を増やしていくことになれば、どこかで合理性のために桁数が少なくて済む楕円曲線暗号に切り替えていくことになりそうである。当面の間はRSA暗号と楕円曲線暗号との選択、併用がなされるだろうが、ネットの世界では危険だとなると、一気に新技術に移行するケースも多い。


 一般的にRSA暗号の素因数分解の困難さを使う仕組みも理解するのは結構難しいが、楕円曲線暗号はより数学的に難しそうである。一昔前ならば、数学的理論としては一部の数学者にとっては美しいものであっても、実用的には無用の長物だと思われていたようなものではないだろうか。それが社会的インフラである暗号に普通に使われるようなものになれば、普通にPCやネットに少し詳しいような人たちでも、日常的に楕円曲線暗号の薀蓄も語るような時代になるのだろうか。なんとなくちょっと憂鬱な気分にもなりそうだ。