FirefoxはIEを抜けるのか?

 しばしば話題になるFirefoxIEのシェアの関係だが、独禁法との関係で欧州ではブラウザの選択画面が採用されたことから、FirefoxIEのシェアを抜けるだろうかという期待にもなるのだろう。しかしeWEEKの記事は(どういう人が書いているか知らないが)、PC初心者向けのの雑誌であるのか、どうもいつも表面的なことしか見ていないようにも思える。海外の記事なので、いつものようにネタとして自由にツッコミを入れてみることにしよう。

FirefoxはIEを倒せるかもしれない(ITmedia)
IEのシェア、減少続く 61.6%に(3.2)
Google Chrome、IEとFirefoxからシェア奪う..(2.2)

 FirefoxIEのシェアを奪うのではないかという期待は、もうずっと何年も前からある。技術的な高さはもちろんだが、IE6が長い間そのままだったことでCSSJavaScriptへの対応が遅れていたこと、そして今は亡きNetscape Navigatorの遺伝子を受け継ぐブラウザへの期待感などがあったためである。しかしネットの状況は日々変化している。Firefoxの状況もいつまでもそのまま続くわけではない。一番大きなことはGoogle Chromeの登場だろう。Firefoxの遅々とした歩みに、Microsoftを追い詰めたいGoogleがしびれを切らしたという説もある。忘れてはいけないのは、非営利団体であるMozillaのほとんど唯一のスポンサーはGoogleだということである。実質Firefoxの命運はGoogleに握られているといってもよいのである。そうしたことを前提にして、記事の10の理由にコメントしてみよう。


1. 既にかなりのシェアがある
そのシェアの歩みが遅いことに問題がある。ここにきて急速にシェアを伸ばしているのはむしろGoogle Chromeである。シェア10%も遠からずかもしれない。カギはHTML5対応かもしれない。対IEということでいえば、Firefoxだけでというより、Firefox & Chrome & Safari & Operaのトータルのシェアで早く逆転することだろう。


2. 多彩なアドオン
アドオンだからといってブラウザは何でも多機能がよいというわけでもない。Chromeは逆にそのシンプルさで高速なことが受けているわけである。HTML5ビデオのように、本来であればブラウザの基本機能で事足りるに越したことはない。セキュリティを考えれば、なおさらである。頻繁なアップデートも煩わしい。


3. オープンソースである
Netscapeオープンソースがベースになっているから当然と言えるし、Mozilla非営利団体としてやっている根拠でもあるだろう。オープンソースを開発する団体は運営がそれなりに大変である。今はGoogleから得られる収入でなんとかやっているが、契約が切れる将来はどうなるか。


4. セキュリティが強固
というより、IE6の寿命が長すぎて最新のセキュリティに対応できなくなったことから、相対的にFirefoxのセキュリティが高いように見えただけである。Firefox脆弱性に対処するために、しばしばアップデートを強いられている。それでもまだクラッシュする脆弱性は残っているかもしれない。


5. 速い
IEに比べればだろうが、これはChromeには負けているだろう。Chromeから刺激を受けていることは確かだろうが、Googleの手前味噌のJavaScript実装テストでは下から2位である。


6. 評判がよく、信頼されている
ネットに強い人には評判はよいだろうが、一般ユーザにはなかなか違いが理解できない。好みはともかくとして、IEが信頼されていないということにはならない。WindowsやOfficeを提供しているMicrosoftのブラウザなのに何が悪いの?ということになるだろう。


7. ブラウザ選択画面で有利な位置に
これが最大の論拠だろうが、現時点では欧州向けだけである。だから有利に働くかもしれないという期待も欧州だけの話である。


8. 専門家に好まれている
Microsoftは、IEについては圧倒的多数の一般ユーザ向けの人気を狙っている戦略かもしれない。極端に言えば、それはWindowsLinux(専門家に好まれる)みたいな関係かもしれない。


9. 口コミ効果
「ユーザーが家族や友人にFirefoxを勧める可能性も高い」には笑わされた。本当のシェア獲得は企業や公的機関で正式採用されるブラウザとして拡がることだろう。職場や公の場所で使われているものは家庭やプライベートでも自ずと拡がる。企業などでの採用の是非は軽い口コミだけでは決まらない。勝手にインストールできるものでもない。


10. モバイル版ブラウザ
スマートフォンやモバイルでのブラウザの状況はまたPCとは異なり、どれが主流になるかはわからない。iPhoneといいAndroidといい、Mozillaスマートフォンを有していないことだけは確かである。


 うがった見方をすれば、FirefoxIEに代わる選択肢としての現在のシェア2位の立場の方が居心地がよいのかもしれない。トップに立ってしまえば、何かと風当たりも強くなる。Mozillaという団体にとってはそれほど体力があるわけではなく、Microsoftは風よけのような存在かもしれない。そこがGoogleとは根本的に立場が違うところである。