Yahoo! JAPANがGoogle検索エンジンを採用

 これはやや驚いた。Yahoo!JAPANは本家Yahoo!のように、当然検索エンジンMicrosoft Bingに切り替えるのかと思いきや、なんとライバルのGoogle検索エンジンを採用することにしたという。Yahoo!JAPANはすでに本家Yahoo!とはかなり独自路線を歩んできてはいたが、今回の決定は真っ向から反対の路線に行くようなものだ。

「Yahoo! JAPANがGoogle検索エンジンを採用」の報道(ITmedia)
Yahoo!JAPAN、Googleの検索エンジンと広告配信システムを採用 正式発表
「Bingも無視していたわけではないが」―井上社長が語る、ヤフーがGoogleを選んだ理由
Yahoo! JAPAN のより良い検索と広告サービスのために(Google Japan Blog)
Yahoo! JAPANの検索エンジンがグーグルに--検索連動型広告も導入(CNET Japan)

 日本のWeb検索の事情は世界の趨勢とはやや異なるものだった。世界ではGoogleが圧倒的に支持を得ていて、Yahoo!Microsoftはジリ貧傾向にあった。ところが日本ではインターネット普及の初期の頃からYahoo!検索の支持者が相変わらず多い。自分も毎年、数十人のPC初中級者対象に「主に利用する検索サイトはGoogleYahoo!か」という質問をすることがあるのだが、半数か、やや多いくらいでYahoo!JAPANの利用者が多い。昔からYahoo!ばかり利用している年配者がそうなのかと思いきや、案外若い人でもYahoo!JAPANを好んで使う人も多い。なんとなくその理由も聞いてみると、やはりトップページからのYahoo!JAPANのコンテンツに引かれているケースが多いようだ。Yahoo!オークションやショッピング、Gyao!など日本独自に展開しているコンテンツも多いためかもしれない。


 確かに検索という点では競合するが、展開するWebサービスの内容ではYahoo!Googleでは全く異なるサイトに見える。検索で実質Googleに頼っても、それによってさらにYahoo!JAPANのWebコンテンツへのアクセスが増えればよいという考えなのだろう。Yahoo!JAPANというより、株主であるソフトバンクのトータルのネット戦略が関係していると思われる。


 MicrosoftYahoo!の買収に乗り出したことがあったが、もしそれが実現していたらYahoo!JAPANとしてはどう対応していたか。それに対抗するために一時Yahoo!Googleが検索で提携してMicrosoftを敬遠する動きがあったが、米国では独禁法に抵触する疑いが持たれそうになってGoogleが降りた。結局、MicrosoftYahoo!買収は実現しなかったが代わりに、Bing検索とYahoo!検索の提携が実現したという経緯がある。少なくとも本家Yahoo!は実質はBingに移行することになった。


 同じようにYahoo!JAPANはMicrosoft Bingと提携することを、良しとしなかった。それどころか日本では評価未定のBing(実際正式の日本語版が提供されたのはごく最近である)よりは、検索部門でしのぎを削ってきたGoogleと、まさかの「大連立」を組むことにした。米国では独禁法のこともあり実現しなかったYahoo!Googleの検索提携が図らずも日本では実現することになったのである。ソフトバンクとしては米Googleとも提携することで、さらにネット戦略が拡がるとみていることだろう。


 これで今後は上のような「Yahoo!とGoogleとどちらを利用しているか」という質問自体、あまり意味のないものになるだろう。もっとも昔のGoogleの創業間もなかった頃には、Yahoo!検索のその他の検索結果の部分はPowered by Google」によっていた時代もあった。Yahoo!のディレクトリ型検索の方がまだ幅をきかせていた時代である。その頃に戻ったと見ることもできるが、取り巻くネットの状況も、GoogleとYahoo!の力関係も大きく様変わりしている。