日本人の平均寿命は過去最高更新

 だいぶ以前から長寿大国とされてきた日本であるが、今年もさらに平均寿命の過去最高を更新したという。不景気で自殺者が増加していたり、災害で亡くなっている人のことを考えれば、なんとなくどこの国の話かと思えなくもない。

 日本人の平均寿命、男性79.59歳・女性86.44歳 4年連続で過去最高(日経新聞Web刊)

 女性の平均寿命86.44歳で25年連続世界一は凄いとしかいいようがない。あくまで平均なわけだから、普通に90歳くらいまで生きる可能性も十分あるわけだ。男性の79.59歳も世界で5位に落ちたとはいえ、十分長いと感じる。これが戦前だったら、まだ平均寿命がせいぜい40歳過ぎくらいだったはずである。


 一番大きな要因は、やはり医療の進歩だろう。少子化になったとはいえ、幼児段階から子供の死亡率が低くなったことと、高齢者が医療によって長生きができるようになったからだろう。裏を返せば「少子高齢化」は必然の流れだったといえる。昔は子供の数が多いといっても、必ずしも全員が無事に育つとは考えられていなかったといえる。食糧事情や衛生環境、病気への対処などが、今とは比較できないものだった。子どもが育つのは生存競争であり、ある意味確率的なことなのでそれも運命だ、という諦観もあったのだろう。


 現在では人が亡くなる病気も限られたものになっているから、よほどの不養生をしていない限り、命に関わることは少なくなったといえるだろう。昔は胃かいよう、肺炎、結核などでも亡くなったものである。たとえばあの夏目漱石は胃かいようのために50歳の若さで亡くなっている。現在なら普通には考えられない死因であり、もし現在の平均寿命通りにあと30年も生きていたら、後世にどれだけのものを残しただろうかなどと想像してしまう。


 さて長寿は良いのだが「世界の幸福度ランキング」では日本はなんと90位だそうである。幸せかどうかはかなり主観的な観念だが、日本人は長生きしながら不幸せを感じているのだとしたら、やはり長寿世界一は、どこか他人事のように聞こえる。自分も最近、以前親しくしていた人の若くしての訃報に接して、長生きすることは実は難しいことなのかもしれないと感じている。