携帯キャリアの電子書籍事業参入

 タブレットPCの普及によって最も期待されるのが電子書籍の普及である。今春にiPadが発売されたばかりだが、それに合わせたかのように、大手書店、出版社、印刷会社、そして携帯キャリア各社が電子書籍事業への参入を発表している。

ケータイ大手3社が電子書籍事業へ本格参入--各社の動向を振り返る(CNET Japan)

 タブレットPCであるからといって、これまでのようにPCのハード、ソフトメーカーではなくて、電子書籍に期待する書店や出版社が反応しているのは、ネットに押されて紙の書籍が衰退傾向にあることから、大きな時代の転換が迫られていることの表れであろう。


 そして国内の携帯キャリアの思惑である。iPadiPhoneと共通のOSをベースにしており、それを追うであろうタブレットPCの多くもAndroidをOSとする可能性があることとモバイル性から、携帯との結びつきが大きいと見ているのだろう。PCよりはスマートフォン側からタブレットPCへ近づくというわけである。そのときの大きなコンテンツが電子書籍になるはずだから、スマートフォンのところから押さえておこうというわけだろう。国内ではソフトバンクiPhoneiPadも販売権を握っているから、現状では大きくリードしているといえる。


 ただし日本語の電子書籍はまだこれからである。先にタブレットPCが普及してしまってから電子書籍が普及するわけではない。先に電子書籍が充実するようになってから、それを読む道具としてタブレットPCを同時に購入するという流れにもなりうるわけである。そこが従来のPCの普及と動機が異なるところである。ソフトウェアを使ったりインターネットを利用することが目的ではなくて、電子書籍を読むこととそれに関連したアプリやネット接続の作業ができるための道具としてタブレットPCが必要とされることになるのである。


 現在いくつかのグループが形成されているが、これはまだ電子書籍市場がどうなっていくか、各社ともまだ予測できない段階なので、なるべくお互いに市場を育てていこうという姿勢の表れかもしれない。国内では、AppleAmazonにやられっ放しというわけにはいかないということか。PC側からみれば、従来のノートPCの一部はタブレットPCへと移行することになるのか、出版社側などからすれば果たして紙の書籍が減った分を、本当に電子書籍で活性化できるのかという期待と不安を抱えている。