新庄の予告ホームラン

 年末ということもあって、たまたま金スマの新庄劇場を見てしまった。華やかに見えていた裏側の部分で、引退したからこそ明かすことができる内容もあり、なかなかよかった。元はといえばドラフト5位だった選手が、ここまでプロ野球を引っぱってきたのだからそれだけでも凄いが、ここ一番での強さ、強運はタイプは違うものの長嶋茂雄以来といってもいいかもしれない。メッツ時代のニューヨークでもクラッチヒッター新庄と言われていたが、打席だけではない強運を引き寄せる力をあらためて思い知らされた。


 太腿の筋肉はデコボコになっており、本当に満身創痍の状態であったようだ。指名打者タイプの選手ならまだしも、真骨頂の一流の外野守備のプレーを維持するには、もはや難しかったのだろう。


 余命いくばくもない少女と交わした約束から、翌日の試合で予告ホームラン達成、そして2年後の日本一達成と、まるで作られたドラマそのままを放映しているではないのかと思わせられた。予告ホームランなんて、偉人伝には必ず出てくるベーブルースが病室で難病の少年と交わした約束の話と同じではないのか。やはり松井がニューヨークの病院で、知り合いの少年を見舞って、翌日の試合でホームランを打ったときに「こんなことになるんだったら、ホームランの約束をしておけばよかったよ」とベーブルースに引っ掛けて冗談を言ったことがあったが、新庄がまさか本当にやってのけていたとは驚きだった。そして2年後に日本一と、41年間も日本一になっていないチームを、少女との約束で宣言した上で実現させてしまうのだから、もはや強運というより神がかり的だ。


 少女は不幸な結果になったが、最後に新庄から生きる希望をもらったのが、せめてもの救いだったかもしれない。バラエティ番組の作りだったとはいえ、親子の殺人、イジメだ自殺だという最近の世相とは、およそかけ離れた話だった。