箱根駅伝

 今年も箱根駅伝の中継を見入ってしまった。解説の誰かが言っていたが、箱根駅伝はどこか「走る格闘技」のイメージがある。ただ根性論だけの昔とは違って、走法やトレーニング法もだいぶ変わったんだろう。今回は1区から大差がつく異例の展開だったし、花の2区でも差が縮まらず、ひょっとしてこのままかと思っていたら、5区だけで4分差をまさかの大逆転。昔から2区は注目選手が集まるところで、山登りの5区はどちらかといえば地味な選手が集まるところの印象があった。ところが今回は5区が主役だったという感じだ。1区といい5区といい、レース展開の戦略も変わってきたのだろう。


 花の2区といえば瀬古をはじめ名ランナーの名が思い浮かぶが、中でも記憶に残るのはオツオリだろう。不幸にも、昨年の夏、母国ケニアに帰国中に交通事故で亡くなったそうだが、その後続くケニアからの留学生の先駆者でもあった。日テレで中継が始まった頃、箱根駅伝では聞いたこともなかった山梨学院大学の名前を一気に世間に知らしめた。その走りはまさに「ゴボウ抜き」という言葉がふさわしいものを映像で演出した。今でも2区では、今年は誰がゴボウ抜きの走りをするのだろうか、という期待で見てしまう。
 しかし無敵のオツオリが4年のとき、なんと2区で抜かれてまさかの2位。これでもう山梨学院はダメかと思われた矢先、タスキを受け継いだ同じケニアからの留学生で、それまでオツオリに比べ不甲斐ない結果が続いていたイセナが目の覚めるような快走を演じ、山梨学院を初優勝に導いた。箱根駅伝の歴史の中でも名シーンの1つに数えられるものだったろう。
 箱根駅伝出身の五輪マラソンランナーは瀬古や谷口などがいるが、最近あまり傑出した人材が出ていないようだ。単純に考えれば100人以上の候補者がいるはずなのに、箱根駅伝で燃え尽きてしまうのか、練習し過ぎで故障を抱えてしまって大成しないのだろうか。
 まだ復路もあるが、箱根駅伝は珍しく色眼鏡なしに視られるコンテンツだ。