経済成長と格差拡大

 今年は景気回復だ、といい話ばかり財界関係者は言っている。一方で国民は景気回復の実感がなく、給料も上がっているわけではない。そりゃあ資本主義の世界だから儲かる者もいれば、損する者もいるのは理の当然ではある。しかし、もはやバブル崩壊以前のような社会には戻らないだろう。さんざんリストラだの若者のニート化だのが蔓延していくうちに、社会の構造や意識もだいぶ変わってしまった。小泉内閣時代のうちに、痛みを伴うだの格差社会だのが当然のように言われるようになった。実は経済格差の拡大があってこその経済回復だったわけだ。みなが経済的に豊かになると、国がもたない。銀行が回復したのも、中小企業の切捨てや徹底したリストラのおかげだ。昔のような右肩上がりの経済成長の夢をもう一度と考えているのは、格差社会の上のごく一部の人たちに過ぎない。
 よく見ると、政治家から芸能人もスポーツ選手もあらゆる分野で世襲がかなり進んでいる。格差社会というのは経済的格差ばかりでなく、実質的な職業の選択、職種の格差まで拡大してしまった社会のことではないのだろうか。士農工商身分制度は江戸時代が終わって廃止されたはずだが、新しい身分制度が確立されてきている気がする。「美しい日本」と言っても、誰にとっての美しい日本なのかはっきりしない。格差社会の下に追いやられた人たちにとってのものではないことだけは確かなようだ。うわべだけの経済的豊かさと違う本当の豊かさは、庶民自らが見つけていくしかないのだろう。