K-1 HERO'S秋山失格

　格闘技に関心がない人にはどうでもよいことだが、年末TVで見ていただけに、すっかり白けてしまったようだ。TBSの格闘番組はボクシングの亀田といい散々だ。故意ではないとはいうものの、試合前に全身にクリームを塗るなんて、どういう感覚なのだろう。
　K-1といっても、厳密には前田日明がプロデューザー？を努める、寝技もOKの総合格闘技 HERO'Sの試合。PRIDEがフジに切られて表舞台から消えたので、敵失で代わりにHERO'SがK-1とのコラボで出てきた感じ。そして初代チャンピオンが前田と同じく在日系の秋山だったわけだ（もっと遡れば力道山や大山倍達）。秋山は柔道代表でクリーンなイメージがあっただけに、それが台無しになった感じだ。清原も何をしに顔見せに行ったのかということになった。
　騒動の根底にはプロレスは八百長だが、K-1やPRIDEは真剣勝負（ガチ）だからという妄想がある。実際、この構図が近年のプロレス人気の低下、K-1やPRIDEの人気上昇につながってきた。それを強調することで、いわばプロレスを踏台にして両団体はのし上がったわけだ。プロレス八百長論を語りだすと１サイトできてしまいそうだから（笑）深入りしないが、興行という観点で見れば八百長かどうかなんて、全然本質的な問題ではない。そんなことは青臭い子供の言うことだ。
　今回の秋山の問題は、桜庭相手に道着を付けて戦うかどうかを直前まで決めなかったことだ。いや決めていたのかもしれないが、相手に知られないようにあえて明かさなかった。これが作戦だとして、道着を脱ぐと柔道技は使いにくくなるものの、相手には組まれにくくなる。さらにレスリング出身の桜庭に組まれにくくするためにクリームを塗ったのだろう、と解釈されるのは当然のことである。普段はあまり強いアピールはしない桜庭が血相を変えていたのは、それだけ組んだときに違和感がありすぎたということだろう。
　それはともあれ、今回を見ると桜庭に精彩がなさすぎた。インタビューされても何も答えなかったし、勝負するという覇気も感じられなかった。やはり度重なる頭部へのダメージなどでコンディションは最悪のようだった。だからノーコンテストでなかったとしても、やはり今回の試合はいただけなかった。桜庭の選手生命は実質終わっていると思う。
　桜庭が注目されたのは、師匠の高田とか誰もグレイシー一族に勝てないとき、あっけらかんと１人だけ勝ってしまうからだった。グレイシーは実はそんなに強くなかったのかもしれないが、相手をしたプロレスラーはもっと弱すぎた。だからプロレスがPRIDEなどの踏台にされてしまったのだ。今はどうでもよくなったが、ファンが求めているのは本当に強いと思わせるスター性のある選手であり、興行的にも強い選手である。残念ながら相撲の横綱と同じで、日本人でそういう選手はなかなか出てこない。