渡辺竜王、将棋最強ソフトに勝利

 イベントがあったようなので、引き続き将棋の話題。現在、将棋プロの名人と並ぶ最高位である竜王タイトルを保持する渡辺明竜王と、将棋ソフトのチャンピオンである「ボナンザ」フリーソフト)が、ハンディなしで公開対局で初めて対決した。かつてのチェスのチャンピオンのカスパロフIBMのスーパーコンピュータ・ディープブルーにあやかったものだろう。
 チェスの方ではすでに、コンピュータは人間の世界チャンピオンと互角のレベルになっているが、将棋や囲碁などは、まだまだプロレベルには達していない。

渡辺竜王、最強の将棋ソフト破り面目保つ

 予想通り、渡辺竜王の制勝するところとなったが、全く一方的な勝負というわけでもなかったようだ。そもそも現在の最強将棋ソフトは、アマチュアの全国代表レベルのいわばセミプロ級にある。アマの各県代表を50人くらいとすれば、プロも含めると、もはや人間で将棋ソフトに勝てるのは200人以下くらいしかいないことになる。ここ10年ほどで、商用ゲーム化されたソフトを含め、次々と新しいソフトが登場してきて、どんどん実力が上がってきている。ボナンザもアマ最高の六段の実力だそうだ。つまり、そのへんの腕自慢のおっさん程度では全く歯が立たなくなってしまった。


 自分もそうで、何年か前までのバージョンが低い頃の将棋ソフトだと、こちらがうっかりミスでもしなければ、なんとか勝てるレベルだったが、現在のバージョンの最強モードだと、気合を入れて相手をしても、ほとんど勝てなくなってしまった。特に終盤戦のギリギリの場面になると、人間と違ってミスをしてくれないので、多少こちらがリードしていても的確な応手の連続で、いつのまにか逆転されて寄せ切られてしまう。


 もっとも人間同士でやって負けると悔しくて腹立だしいのだが、コンピュータに造詣のある身としては、将棋ソフトに負けるのも楽しいものだ。「いやあ、うまくできたソフトだな」などと、ソフトとかアルゴリズムのからくりを想像することが楽しいのである。以前から自分も、暇と能力があれば、なんとか自分でも将棋ソフトを開発したいと思っているくらいだ。いや、実は開発日記みたいなブログも開きかけたのだが、三日坊主に終わっている(笑)。


 今回の人間vsコンピュータは、どちらかといえば将棋プロのアピールの場だったような感じだが、ディープブルーのようにコンピュータメーカーが本気で開発に投資すれば、あっというまに将棋プロの寿命も縮まるかもしれない。しかし幸か不幸か、将棋はチェスと違って国際的ゲームではないので、メーカーには開発のメリットはないだろう。それで今は、フリーソフトを開発するプログラマーが群雄割拠して参戦している状況のようだ。この話題は、今後しばしば触れることもあるだろう。