猪木4つ目の新団体旗揚げへ

 アントニオ猪木が、生涯で4つ目になるプロレス新団体を旗揚げすることを発表した。といっても、現在のプロレス人気の低迷ぶりでは、注目している人すら少ないだろう。

猪木スポンサー獲得!6・26新団体旗揚げ

日本のプロレスの開祖の力道山の死後、猪木と馬場の団体の興亡がプロレスの歴史そのものになってきた。猪木のライバルの馬場もすでにこの世を去り、近年はK-1やPRIDEといった格闘技に人気面で押され、話題にすらならなくなっている。先日に週刊ゴングが休刊になったことも象徴的な出来事だった。


 昔のプロレス人気はテレビの歴史であったともいえる。テレビが一般家庭に普及する時代に、プロ野球と並ぶ人気のコンテンツであったといえる。視聴率競争が過熱する中、ゴールデンタイムからはずれ深夜枠になったあたりから、プロレスラーそのものも知られなくなった。モノマネ芸人があるレスラーのマネで人気を出た後にレスラー本人を見たら、その芸人のマネをしているレスラーがいると思われたという話まである。


 今は闘魂ビンタのおじさんみたいになっている猪木だが、現役時代は保守的だった馬場に対して、それまでの常識を覆すようなことを数々と仕掛けてきた。アリ戦を含む異種格闘技戦、東京ドームでのプロレス興行、プロレスラー初の国会議員平壌での19万人興行、イラク人質解放交渉などなど。
 国内では功罪をいろいろ言われるが、この人は、混乱している時代とか四面楚歌の状況の中でもっとも真価を発揮する人であると思う。自らの苦難の生い立ちがそうさせているのだろう。
 その意味ではあのまま国会議員を続けていたら、イラクのときのように、膠着している北朝鮮拉致問題などこそ、独自の人脈から突破口を開いてくれたかもしれないと思ってしまう。

 それはともかく、年齢的にも最後の新団体となりそうである。若い頃とは取り巻く情勢も全く異なる。所属選手も今のところゼロだという。昔から猪木の弟子はいっぱいいたが、猪木を越えられる人間はいなかった。感性で行動するあたりは、あえて言えば長嶋的である。人気はあるが、周囲は付いていけないところがあり、見る方の人気的にはそこが魅力でもあった。


 もう新団体といっても、プロレス自体にも期待している人は少ないだろうが、成否はともかく、どこか昔の「まさか」と思うことを仕掛ける猪木に、ひそかに期待している自分がいる。