高校野球部の特待生制度

 西武の裏金問題に端を発して、今度は高校野球部の特待生制度がやり玉にあげられている。日本学生憲章に抵触するのだとか。その憲章がどんなものかは知らないが、何ともおかしな話だ。

特待生制度、日本文理など新たに7校…計35校に
西武「裏金」問題 高野連の対応は疑問だらけ(4月26日付・読売社説)

 そもそも西武の裏金問題が「問題」なのは、ドラフト制度がプロ球団同士の戦力の不均衡が起こらないようにと定められたものの、その前提を崩しかねないからであり、紳士協定とか倫理規定に反するということだろう。つまり、あくまでもプロ側だけの論理の話だ。
 そのプロ球団が、将来有望な中学生や高校生(の親)や大学生に金銭を渡すことは、教育上の観点からも好ましくない。そこまでは、まだわかる。


 しかし、野球が得意な選手を推薦で入学させたり授業料免除したりすることもまかりならん、と言うことは全く別の話なのではないのか。高野連は今さら何を言い出しているのか。全国で甲子園出場をかけた高校同士の争いをヒートアップさせ、甲子園常連高などでは選手を出身県など関係なくスカウトしまくってきたのを見過ごしてきたのは高野連自身だろう。多くは私立高校であり、新設の高校などでは学校のレベルを上げるために、まず甲子園で学校の名前を売り、生徒が集められるように知名度が高くなったところで進学校に転換していく、という学校経営の戦略に利用してきたところさえある。少子化の現在ではなおさらだ。
 その是非はともかく、全国のそういう高校に支えられて、甲子園大会や高野連なんて維持されてきたようなものだ。各県の地元出身者だけの公立高校なんて、とっくに甲子園に出場するのは不可能なレベルになっている。


 だいたい、推薦がダメとか言ったら、大学のスポーツ推薦や一芸入試だっておかしなことになるだろう。そもそも各学校が生徒をどんな入学のさせ方をするのかは、文部科学省ならいざ知らず、高野連が口を挟む話ではないだろう。それより、有名無実化している「県代表」の資格を見直した方がいいのではないか。全国の高校に支えられてきたのに、それにケチを付けるだけとは、自分らがやるべきことが一番わかっていないのではないか。どうも根本的な責任逃れのための責任転嫁をしているようにしか見えない。