小川直也イノキゲノム参戦表明

 この前、藤波がイノキゲノムに参加表明したのに続き、小川直也も参戦表明をした。また1人猪木の直弟子が集結である。

小川直也、猪木新団体への参戦表明!「アングルとやらせろ!!」=IGF

 この参戦表明は先の猪木の呼びかけに応えたものだそうだ。ちょうどハッスルを休業宣言したばかりの小川だっただけに、予想されたことではある。芸能人だらけになったハッスルでの小川の居場所はなさそうだからである。

猪木、小川に参戦呼びかけ「大きな勝負をかけてみろ」=IGF

気になるのは、小川の痛いところを突く「彼はプロレスを通じて格闘技で天下を取れたはずなのに、達成できていない」の言葉である。小川がプロレス転向を表明したとき、ファンの誰しもが期待したことだからである。デビュー時には、すでにプロレスではトップになっていた橋本真也を過激なファイトで粉砕して、物議を醸したりもした。その橋本に恩義も感じていた小川は、その後橋本と共闘して、エンターテインメント路線のハッスルに転向していくことになる。しかし、その橋本もすでにこの世にはいない


 小川からすれば「勝ち負けを競うだけならアマチュアで十分。プロは魅せるのが仕事」と言うのは、柔道時代に金メダルを獲れずにバッシングを受け続けたことが根深く残っているからだろう。プロのなんたるかを最初に教えられたのが猪木であり、ともに戦った橋本だった。プロとは何かを迷ううちにエンタメに行ったり、PRIDEに出たりしていたが、どちらも中途半端な結果しか得られていないというところだろう。もう一度、以前とは違う猪木の路線で、小川がインパクトを残すことはできるのだろうか。


 格闘技で桜庭だ、吉田秀彦だといっても、野球にたとえれば、彼らは中距離打者である。なんとなくボーッとしていても、小川は特大ホームランを期待してしまうホームラン打者である。ヤンキースの松井が、いくらイチローや城島に打率で下回っていても、外国人選手と並んでも体格やパワーで全く見劣りがせず、下位打線にいても4番打者並みの活躍を期待するのに似ている。


 小川を初めて見たのは、ちょうどテレビで柔道世界選手権の決勝をやっていたときだった。まだ明治大学在学中の19歳のときで目はギョロっとヌボーッとして、相手よりもしきりに監督やコーチの指示の方が気になるような素振りだったが、余裕で優勢勝ちだったと思う。解説していた山下泰裕氏がしきりに「たいしたもんです、たいしたもんです」と連発していたのが印象に残った。山下引退後に現れた柔道界の巨星だったと言ってもよい。何せ、高校時代から柔道を始めて、たったの4,5年で世界制覇をしたことになる。いかにその格闘技センスに優れていたかということである。


 小川は自分の人生には3人の師匠がいるという。1人は高校時代の柔道の恩師、2人目は明大時代の柔道の恩師、そして3人目が猪木である。猪木とは近年、プロレスか格闘技かの路線の違いから疎遠になったが、猪木の弟子連中が猪木に付いたり離れたりするのは日常茶飯事?だし、別に喧嘩別れしたわけでもないから、特に問題はない。むしろ離れていても、師匠であることを忘れていないのは小川の律儀さだろうか。


 小川は、猪木の1番弟子である藤波から始まる最後の大物弟子だと思っている。「天下を取れるはずだったのに」という猪木の思いと同様であるが、まだ思い入れがある。最後の勝負だと思って、大物ぶりを見せつけてほしいものだ。