Solaris は Linux化するか?

 うーん、難しい問題というか、非常に関心があるだけに考えれば考えるほど、頭が混乱しそうだ。おそらくこの問題でいろいろな人と議論すれば、いろいろなことを言われそうで、自分でも頭の中を整理しておかなければだめのような気がする。自分でも考えがまとまらないまま、覚え書きのつもりで取り上げておこう。

 下の記事を一見すると、SunのCEOになったジョナサン・シュワルツとLinuxの元祖のリーナス・トーバルズの個人的関係のエピソードのように思われるが、これはGPLを間に挟んだ、ネットの将来にかかわる極めて重大な問題である。

もしカーネルが選べるとしたら Debian GNU/Solarisという選択肢

 数年前にSolarisオープンソース化されたときには、かなりの衝撃を受けた。すでにLinuxの時代とはなっていたものの、ワークステーション(WS) UNIXの本流というべきSolarisは、かつてWSを使いたくても使える立場になかった者にとっては、憧れの的みたいなものだったからだ。WSといえばエンジニアか、理工系大学にスタッフとして残っている人間でもなければ日常的に使えるものではない。Linuxは本質はUNIXとはいえ、PCでパーソナル使用を可能にしたUNIX互換OSと言えた。


 そのWSの生き残りであるSunのSolarisが、PCで(x86 CPUで)パーソナルでも利用できるOSとして、オープンソース化されて、現在ではOpenSolarisとなっている。自分もすぐにダウンロードしてなんとかインストールしたが、初心者にはなかなかインストールから、Linuxよりは敷居が高く感じられた

 ただPCのUNIXとしては、Linuxの方に一日の長があり、実際のシェアでもRed Hat/Fedoraや欧州のSUSE Linuxなどがはるかに大きい。SunがSolarisオープンソースした目的も、これらと数で競うことにはなさそうに見えた。


 そしてGPLであるが、GPLv3が正式に公開された。Linux陣営とGPLとでは、もともと温度差があり、オープンソースフリーソフトウェアの概念は、商用利用に対する考え方で決して同じではなく、似て非なるもののようである。このへんも複雑な話で、よく勉強はできていない。

4度のドラフトを経て GPLv3の正式版を発表、FSF

 しかし意外なことに、他の団体に比べても、SunはGPLv3の適用には前向きのようである。現にJavaは一足先にすでにGPLが適用されている。そのJavaは、それ以前はCDDLというオープンソースライセンスが適用されていて、現状ではOpenSolarisもこれが適用されているというから、ややこしい。

 トーバルズ自身もGPLには、やや懐疑的であったと思うが、反対というわけではなかった(ストールマンに付いていけなかっただけかもしれない)。そして、OpenSolarisにGPLv3が適用されることを望んでいるようだという。このへんがまたややこしい。


 Linuxを開発する関連団体は、いまやかなり多いと思われるが、トーバルズは特定Linuxディストリビューションに肩入れする立場ではないわけで、Linuxカーネル部分の開発をいまだに仕切っているのだろう。というより、Linuxカーネルそのものなのだ。

 そしてx86アーキテクチャに可能なオープンソースカーネルがもう1つ、それがOpenSolarisという選択肢である。トーバルズ自身、OpenSolarisカーネルそのものの、完全なオープンソース化を望んでいるということのようだ。


 商用のSunのUNIXが、今さらオープンソース化されてもしようがないだろう、というのは少し違う。記事にもあるように、もともとGPLを実現するソフトウェア体系は、UNIXを中心に意図されたものだった。すでにライセンスで縛られたソフトウェアが存在すれば、1からソースコードを書き直し、GPLライセンスで公開した。それが現在「GNU・・・」と呼ばれるソフトウェアである。ボランティアと寄付で遂行していたので、プロジェクトはゆったりと進んでいた。そのうちOSはUNIXベースのフリーソフトウェアで、GNU Hurd というものだった。GNU Hurd が進まないうちに、PCとインターネットの時代となり、その申し子と言えるLinuxが主流になった。Linuxの存在のおがげで、GNU Hurdはあってもなくてもよい存在になったのである。  


 といってもLinuxも完成したわけではない。むしろディストリビューションが増えて、新たな問題も多く発生してきている。まだまだ進化させていかなければならない部分も多いのだろう。その舵取りをどうするかである。ここに、まだトーバルズの出番があるのだろう。
 そしてトーバルズにとっては当然なことかもしれないが、意外なことにOpenSolarisにモーションをかけようとしているのである。


 これが実現したらどうなるかだが、驚くことに、これまでのLinuxディストリビューションカーネルだけが OpenSolaris に置き換わったものが誕生する可能性があるという。実際にそういうプロジェクトもすでに存在しているそうだ。ある意味、LinuxOpenSolarisの合体である。
 Linuxとして適用しやすいディストリビューションは、Debian系である Ubuntu があるらしい。Googleが社内でも使っているということで話題にもなったが、自分にとってもマイブームなLinuxでもある。「Ubuntu の顔をした、心臓部は Solaris の OS」、ちょっと頭がクラクラするようである。そしてこれを結びつけるのが、完全なGPLなのだろう。ここにGNU Hurdが果たせなかったOSの未来が見える気がする。


 実はトーバルズ自身も学生時代、WSのUNIXを使いたくても使える立場になかったのではないか。そこで、自分自身でUNIX互換のPC用のUNIXを書き下した。それがLinuxになった。しかし元祖UNIXへの思いは断ち切れることはなかった、などという想像は妄想だろうか。長くなったが、いずれにしても今はやはり頭が混乱している。