ゴールデンタイムは死語か?

 注目URLで取り上げられていた記事によれば、テレビのゴールデンタイムの視聴率が過去最低を記録したという。その理由について、業界側はWiiなどのゲーム機が普及したせいで、テレビが見られなくなったのでは、とトンチンカンな話をしていることが、痛いニュースのネタにもなっている。

ゲームに押されテレビ視聴率が低下(英国における日本報道)

いわゆるゴールデンタイムで、視聴率が9%を超える番組が1つもなかったことから、TV業界に衝撃に走ったという。視聴率至上主義によって大型スポンサーも抱えられるTV業界にとっては死活問題になるので、当然のことだろう。
 にわかに原因の分析ができないから、前記のようなゲーム機のせいなどという、取ってつけたような理由を言うあたり、その狼狽ぶりが際立っている。政治にたとえれば、徐々には下がっていた内閣支持率が突如1けた台まで落ち込んだようなものである。


 そもそもゴールデンタイム(19:00-22:00)という言葉は何かと調べてみると、これはTV業界用語の和製英語で、英語ではプライムタイムといい、その時間帯は国によってもやや異なるらしい。いずれにしても在宅率が高い時間帯なので、各局が花形番組をぶつけ、その視聴率がその局の活力を示す指標になるのだという。


 在宅率が高いということで、一家団欒の時間、食事時や食後の家族の会話の時間という前提に合わせて、老いも若きも共通して見られるような番組を歴史的には提供してきたのだろう。今は本当にそのような時間帯かどうかさえ、はっきりしない。

 昔でいえばドリフターズプロ野球、歌謡番組、そしてプロレスなどは、その中の大きなコンテンツだった。ドリフのような長寿のお笑い番組はもはや存在せず、プロレスはすでに20年近く前にゴールデンタイムから撤退、深夜枠で細々とやっている程度である。そしてプロ野球というより巨人戦も全試合中継は難しくなり、一部は深夜に録画中継をやるようにさえなった。


 昔はテレビ・ラジオと新聞だけが日常の情報源だったが、今は世代を問わず、テレビはあまり見ないという人は多い。実際、番組内容が面白くないということもあるが、根本的なことを言えば、TVのような一方通行的なメディアに魅力を感じなくなったということだろう。付き合い程度には見るが、TVの前に陣取って夜遅くまでということはないだろう。今や若い人は1日の中で、TVの画面より携帯の画面を見ている時間の方がはるかに長いだろう。これは一方通行のものではないからである。


 自分も時間がなくなるにつれてドラマは見なくなり、たまにTVで映画を見るくらいである。ニュースくらいはと思い、夜のニュース番組だけは見ていたが、バラエティ化したりキャスターが偉そうなことを言ったりで、恣意性が感じられる番組は見る気がしなくなった。ニュース類はネットで十分になった。


 結局、TV業界というのが旧体質のままで「放送してやっている」という感覚のままなことが、世の中の大きな変化に対応していないからではないかと思える。というより、もはや押し付けのゴールデンタイムのような時代でもないだろう。そんなに見たければ録画でもするし、オンデマンドだって可能になるだろう。もはやTV局の都合で国民の時間帯を縛るという発想自体が古いものだろう。


 一方向とはいえ、何よりゴールデンタイムとやらの芸能人番組はつまらなくなった。チャンネルを合わせる度に、なんでこの人達の営業に付き合わなければならんの、という気分になる。それでも猪木が何かで登場していたりすると、思わず「おっ」と見入ってしまうのは、やはり自分も旧世代の人間に属しているからなのだろう。