松井ホームラン量産体勢

 やっと松井がホームランに目覚めだした。今日のスポーツ紙の一面はめずらしく、松井、松井の見出しが並んだ。日本では見られなくなったダブルヘッダーの試合で連発し、7月になってから面白いように「セイヤー!」のホームランが出るようになった。さすがに今日はないだろうと思っていたら、第1打席早々にまたまたホームランが出た。このペースは2002年に50本を達成した時のペースにも匹敵するという。

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 昨年は手首の骨折で事実上シーズンを棒に振ったのはしかたがないにしても、今シーズンに入ってもヤンキース低迷と同時に、松井もパッとしない成績が続いていた。日本人メジャーリーガーの数も増え、そのぶん松井への注目も相対的に小さくなっていた。イチローが毎年オールスターにも選出され、今年はMVPを獲得するなど相変わらずの注目ぶりからすると、寂しい感はぬぐえなかった。


 それどころか、もしイチローがFAでヤンキースに移籍したりすれば、ホームランを打たなくなった松井はトレードされるのではないかとさえ憶測された。イチローマリナーズに残留が決まったようなので、その線は消えたが、ヤンキースの不調が続けばいつ放出されても不思議ではない立場になるところだ。


 そこにきて、目の覚めたようなホームランの量産である。にわかにマスコミも再び松井に注目しだしたが、これが本来の松井の姿だろう。メジャーに行った頃は、メジャーの投手や球場に適応できるかが問題だったが、5年目ともなれば問題はないはずで、本来の実力が試される時である。


 ヒットを打つ打者は、バットコントロールでヒットゾーンにうまくボールを打ち分けることができるのだろう。しかし、ホームラン打者は狙ってホームランが出るというよりも、普通に打ったボールがホームランになるように思える。
 昔でいえば、王と田淵が典型的なホームラン打者だった記憶がある。王はタイミングでボールを軽くバットに乗せてスタンドまで運ぶような打ち方で、田淵などは軽くスイングしただけでピンポン玉のようにボールがスタンドまで飛んでいく感じだった。Aロッドなどもそれに近い。


 松井は音無しの構えから一発必中の弾丸ライナーで、スタンドまで運ぶイメージである。1打席の中でホームランにできるボールは1球だけしかないという読みで、打席に立っているようだ。どのカウントでそのボールが来るか、あるいは失投を捉えられるかになるが、これは投手との駆け引きになる。選球眼と投手との駆け引きで打つというのは、巨人時代に落合の打席から影響を受けたものらしい。

 メジャーでは150kmを超える球速を持つ投手は当たり前で、球場の広さの違いもあるだろうが、それをホームランにできるだけの力は自分にはない、というようなことを松井は謙遜気味に語っていたが、真意ではあるまい。確かにパワーだけなら松井以上の打者はゴロゴロいるだろうが、ホームランを打てるのはパワーだけではないようだ。

 もっとも日本では、せいぜい対戦する球団が5チームしかないので、対戦する投手も限られ駆け引きもしやすい。メジャーでは同じ投手とは1シーズンでも限られた回数しか対戦しないので、なかなか対応するのが難しいようだ。しかし5年目のここにきて、何かが開眼したのか、相手の投球がよく見えるようになってきたようだ。フォームが安定してきたのが大きいようだ。


 打ち出してきたとはいうものの、Aロッドのペースに比べればそれでも半分のホームラン数(7/22現在17本)である。松井のホームランを特別騒いでいるのも日本のマスコミだけで、ニューヨークでは、Aロッドのホームランやルーキーの活躍の方が大きく取り上げられている。

 問題は、今の調子が一時的な確変ではなく、持続できるものであってほしいことだ。年俸では勝負はしなくてもよいが、いずれAロッドとホームランの数で競う松井も見てみたいものである。火を噴けゴジラ、である。