量子コンピュータの可能性

 量子コンピュータという次世代コンピュータというより、未来のコンピュータというべきもので、SFとまでは言わないまでも、実用化までには数十年単位のタイムスパンが必要ではないかと思われる。その実用化に貢献することができるか、新たな発見があったようである。

量子コンピュータに近づく「原子のスクエアダンス」(ITmedia News)

 最初のアイデアが出たのが20年ほど前、物理学者は原理的に面白いネタであれば実用云々は二の次だが、実用性を重んじる工学系、技術系の人には否定的なものだった。原理的に可能性はあっても、原子レベルのハードウェアやそれらに組み込むソフトウェアがどうなるものかが、夢物語に近かった。


 自分も物理学には少々造詣はあるが、詳しいことは忘れてしまったので適当なことを書こう。電子や原子単位で持つスピンにビットの0,1を記憶させて制御できれば、無尽蔵のリソースを持つコンピュータが作れることになる。 
 ただしこのレベルでは量子効果が問題になるので、1つ1つのビットが0か1かは確定させることができない。こういう量子の確率をうまく制御できれば、巨大なビット列の「平均としての結果」はうまく取り出すことができるし、実用的な結果であるというものだろう。


 10年ほど前に、こうした量子コンピュータアルゴリズムを使った複雑な素因数分解の可能性が示されたことによって、量子コンピュータへの関心が高まることになった(Shorアルゴリズム)。現在の公開鍵方式であるRSA暗号が解読できてしまう可能性があるからである。量子コンピュータの1つのブレイクスルーであると考えられた。

 それでも量子コンピュータとして実装するハードウェアの部分は、数個のビットを実験的に制御できる程度であり、実用化にははるかに遠いものであった。


 それに今回の制御の発見である。着実に実用化の可能性が高くなる方向に進歩しているのかもしれない。少なくとも20年前の認識とは様変わりして、量子コンピュータと言っても、鼻でせせら笑う人はいなくなったかもしれない。


 量子といえば磁性スピンを持つ粒子の総称だが、昔からあるアイデアとしても「光コンピュータ」がある。これは話題に出ては消えを繰り返してきたらしく「光コンピュータは狼少年」と言われてきたらしい。コンピュータではなくて、回線の方では光ファイバーが実現してしまったわけだが、量子コンピュータの1つの側面としての光コンピュータもまた、実現に近づくかもしれない。


 そういえば以前から気になっていた量子コンピュータシミュレータというものがある。買ってみたかったのだが高価なこともあって、それっきりになっていたが、まだ現存するようである。勉強するにはよいかもしれないが、探せばフリーで公開されているシミュレータもあるようである。