Open XML Formatが巻き返し

 Microsoftのドル箱、生命線であるOfficeの標準フォーマットをめぐって、Microsoftが巻き返しに成功したようだ。マサチューセッツ州で2年前にOffice文書の標準化をめぐって、公的機関としては初めて、Officeではない文書形式のOpen Document Format(ODF)を標準に定めたが、ここにきてMicrosoftのOpen XML Formatも標準として認めるという決定がなされたようだ。これは、今後世界にもどういう影響を与えることになるのだろうか。

米マサチューセッツ州、MSのOffice Open XMLフォーマットを採用

マサチューセッツ州といえば、ハーバード大学とかMITはじめ世界的にも有名な研究機関が存在している学術的地域でもある。そのような地域の行政機関の文書の標準化をめぐって、2年前に画期的な決定がなされた。今後、50年先までも公文書をデジタル文書として残すことを考えるとき、現在のMicorsoft Officeの文書では、いつまでも残るという保証がない。よって長期保存が可能で特定のソフトウェアによらずに編集、読み出し可能な文書形式ということで、当時からOpenOffice.orgで採用されていたOpen Document Format(ODF)が採用されたと記憶する。


 これは、すべての文書やデータをXML形式にしてWebアプリで文書の編集可能・加工を可能になることになり、標準文書形式に従う限り、Microsoft Officeの呪縛から解放されることを意味していた。Microsoftも、次期バージョンのOffice文書の標準保存形式をXMLに移行させることにより、これに対抗しているが、同じXML形式とはいっても、Open XMLは事実上Microsoftの独自仕様である。どこがOpenなのかよくわからない。これに対してはODF関連団体が反発して、結局双方とも両形式のコンバータを提供することで決着している。まるで次世代DVDの標準化の争いのようでもある。


 Office文書はOfficeソフトがなければ、読むことも編集もできないことが、Microsoftのライセンス商法を支えてきた。これが破れるとMicrosoftには死活問題になりかねないからである。とはいっても、互換性があるとはいえ、OpenOffice.orgでOffice文書を読み込んだとしても、ちょっと複雑な文書になれば、完全には再現できないこともある。
 私的な利用に限ればたいした問題ではないにしても、公文書となれば話が違う。そして自治体をはじめ業務には、ずっとWindowsとOfficeを使ってきており、現在も使われ続けている。たとえソフトウェアはオープンソースの時代になったとしても、こうした顧客をMicrosoftも長年にわたって手離さない戦略を取るであろう。


 いったんODF採用の決定がなされた後も、Microsoftは政治的な手段やらいろいろ手を回して、結局自らのフォーマットも標準として採用されるようにプッシュし続けたのだろう。その結果、ダブルスタンダードとして採用されることになった。2年前の決定を覆すような決定に対して反対の声もあるようだが、特定の企業や団体に偏らない行政側の態度としては、このへんが限界かもしれない。行政側としては、業務の移行期として、あるいは標準化の変遷の推移を見守るためにダブルスタンダードを採用するという妥協的な立場なのかもしれない。


 しかしこの2年の間に状況は変わった。当時はOffice vs OpenOffice.org etc. のような商用とオープンソースのデスクトップソフトウェアの対立のイメージだったが、Google Docs & Spreadsheets をはじめとするオンラインオフィスソフトウェアが登場し、これらのファイル形式は例外なくODFになっている。
 旧態のデスクトップか、いわゆるWeb2.0SaaS(Software as a Service)かという選択の時代になってきている。業務をWeb2.0に移行させる段階になると、必然的にODFを採用することになると思う。Microsoftも当然、Office LiveのようなSaaSのサービスを始める。しかしMicrosoftは自ら定めた標準のダブルスタンダードのために、自己矛盾に陥るような気がする。これまでの歴史の中でそういう事例が多く見られたからである。しかし、いつも結局混乱するのはユーザの方である。


 米国の1州での問題とはいえ、全米の各州の決定にも影響を与えるだろうし、欧州では米国の特定企業に主導権を握られることを嫌う傾向にあることから、ODFの採用が優勢のようである。

 そして日本の場合はどうなのだろうか。やはり米国の流れに従えということなのだろうか。あるいは文書形式の標準化ということそのものが、あまり関心が持たれていないか、重要性が認識されていないような気もする。特に日本語の場合、さらに文字コードの問題がからんでくる。そう簡単に、Shift-JISやEUCUTF-8などに移行できるとも思えない。


 自分も認識が薄いのかもしれないが、国内ではあまり、XMLフォーマットをどうするかなどという議論がなされているのを聞いたことがない。たとえば、このブログ1つにしても、相変わらずHTML4.0のままなのか、XHTMLのどのバージョンかDTDで出力されるのかとか、あまり気にする人も少ないのだろうか。どちらかというと、見かけのデザインとか使いやすさとかばかりしか議論にならないのだろうか。自分はやはりXMLが気になるのだが。