5次元の物理学

 NHKの朝のニュースで、たまたま見ただけだが、5次元の世界の理論が注目されているとのことだった。詳しい話は調べていないので、ニュース内容と想像だけのことを書こう。
 理論の内容はともかく、その提唱者がハーバード大学の美人物理学教授とのことで、こちらの方がマスコミ的には注目されているのかもしれない。その教授が来日してインタビューの様子と、東大での講演会の様子が紹介されていた。確かにモデルと見間違うかのような美人教授である。


 それはともかく、5次元の世界とは我々が存在している4次元の世界と並行して複数(無数?)存在しており、重力の粒子などがこれらの世界を行き来する。いわゆるパラレルワールドのようなものか。一見、粒子が消滅したと思われていたのは、5次元の他の世界へ移動したことに意味しているとのことだ。美人教授はそのような理論が無矛盾であることを証明したのだという。


 何か凄い理論のようだが、物理学では昔から高い次元から物を考える理論は多くある。スーパーストリング(超ひも)理論では、26次元だ、10次元だ11次元だと次元が大きすぎて、何やら訳がわからない。それ以前には、5次元重力理論というものもあったはずである(カルッツァ=クライン理論)。これらの理論と、美人教授の理論とはどのような関係にあるのかどうか、素人には到底推測もできないことである。


 ただ考えるに、高次元の理論はある意味、何でも言えてしまう気がする。4次元を超える次元は「抽象次元」とでも言えるが、入れ物が大きくなるわけだからそれ以下の次元の世界はすべて含まれるし、説明できない部分は、抽象次元が関与することとして棚上げすることができてしまう。また抽象次元の存在は直接証明することはできない。間接的に、これまで知られている事実と矛盾がないということを示すことができるだけである。もし1つでも矛盾する事実が知られると、その理論は捨て去らなければならないことになる。


 元を正せば、このような理論の手法はアインシュタイン相対性理論まで遡る。事実上、時間を抽象的次元の1つとみなして空間次元とともに伸縮自在に関係させたことにより、それまで空間3次元だった理論が空間4次元から考えることができるようになった。そうして宇宙の構造と無矛盾の理論を構成できることを示したといえるのだろう。時間が絶対的なモノサシではなくなったために、いろいろな可能性を理論的に展開できるようになった。


 などと的外れのことを書いてきたが、一見突飛な話はまだまだある。電気の+−が全部逆の世界(反粒子とか、「この世には電子が1個しかない」というのもあった。後者は著名なファインマンの恩師の先生の話である。1個しかない電子は実は過去と未来を何回も行き来している。その時間軸の「現在」の断面で1個の電子が無数にあるように観測されるだけだというものだ。ファインマンの先生がどこまで本気か冗談で言ったのかは知らないが、実はこのアイデアがその後のファインマンの仕事の大きなヒントになったということである。


 無矛盾の理論と言うものは、言った者の勝ちのような側面もあり、その時点ではホラのように聞こえても、その後の進歩のヒントにもなることもある。5次元の理論の信憑性はわからないが、美人教授に見えたことだけは確かのようである(笑)。