桑田パイレーツ解雇と今後

 残念なことに、桑田がパイレーツをシーズン中ながら解雇された。後半戦になってから打ち込まれる場面が多くなり、メジャーではある程度、予想されることではあった。早くも関心は、桑田の今後に身の振りに移っているようだ。

桑田戦力外に驚きの日本人選手たち…イチロー「寂しい」
桑田、現役続行か引退か「日本でゆっくり去就考える」

球速が150キロを超えるのは普通のメジャーにあって、スローボールと緩急の変化球の制球力では、いつまでも通用しなかったということか、あるいは足の怪我を引きずったまま、不規則な登板に備えなければならない中継ぎの立場で、疲れから徐々にその制球力に狂いが生じたためか、よく原因はわからない。
 もう少し、桑田の全盛期の球威があればと思う反面、それが残っていればメジャーに行くこともなかったとも言えるわけである。ただ、心情的にはもう少し桑田がメジャーで活躍する姿を見てみたかったというところである。日本人がほとんどいないと言われていたピッツバーグで、せっかく桑田応援団が組織されてきたというところだっただけに、地元の日本人もさぞがっかりしていることだろう。


 イチローや松井をはじめ、日本人メジャー選手も解雇を惜しんでいる。解雇自体はメジャーだから仕方がない。年齢のことばかりでないのは、春先にメジャーで50勝も挙げている大家が解雇されていることを考えれば、十分にありうる話だった。7球団を渡り歩いた野茂でも、実質何度も解雇されている。もっとも野茂の場合、高い年俸に見合わないということが大きな理由ではあった。


 さて、そこで桑田の今後である。マスコミが集まってくるために何かある度に会見を開かなくてはならないような立場になっている桑田だが、今後については家族と相談して数日中に決めると言っていたのが、とりあえず日本に帰国して怪我の治療をしなからじっくり考えるということになりそうである。
 もし体力的、精神的に本人が限界を感じているなら、早いうちに引退宣言をしているだろう。これからじっくり考えるということは、野茂のように「現役続行」の意思ありと感じられる。日本球界復帰はありえないだろうから、来春どこかの球団のキャンプに参加できる可能性を探ることになるのかもしれない。立場的には、野茂と同じである。引退を宣言すれば、巨人をはじめ指導者としては引く手あまただろうが、本人は現状ではそれを良しとはしないだろう。


 桑田解雇のニュースでの関係者のコメントの中で、星野監督の言葉が印象に残った。

あの子がチャレンジして、メジャーでも投げて、ものすごくいい経験をした。
今後、指導者になっていく上でもね。我々でも経験していない。俺はあの勇気
を買うシーズン中の解雇だって、ある意味、ものすごくいい経験や自分の力も知らないで…』なんていうOBもいたが、寂しいよな

桑田を「あの子」と呼び、「勇気を買う」という。シーズン中の解雇だってものすごくいい経験だという。同感である。日本の野球界では、特に高額年俸選手はぬるま湯に浸かっている感が強い。あえて厳しい環境に身を置き、しかも感謝の気持ちを持ち続けた桑田は求道者にさえ見える。


 引退してどこかでコーチ修業に、というのも周囲の甘い考えのように思う。巨人であれば、原監督はいつまで続くかわからないが、その後は今さら江川だ中畑だ、でもないだろう。いきなり桑田監督で十分だろう。失敗すれば即解雇の厳しさを知っている監督が、選手の意識改革をしてチームを新しくした方がよいと思えるからだ。