デスクトップPCの将来

 最近、あまりデスクトップPCを長い時間使うことが少ない。職場では作業することは内容的にも時間的にも制約があるし、モニター画面とにらめっこしているのが主な仕事のわけではない。むしろPCを使っているときは空いている時間だと思われるくらいである。自宅ではノートPCを中心に作業するし、デスクトップPCはテストサーバー的に使うことが多く、電源は入っていても直接アクセスはせず、ノートPCのWindowsからリモートログインしたり、Webを通じてアクセスすることの方が多くなった。


 単にPCといっても、従来以上にデスクトップPCとノートPCの役割は明確に分かれていくことになるだろう。またクライアントとしての携帯、モバイルの位置づけも変わってくるだろう。
 特にデスクトップPCは職場にしろ自宅にしろ、スペースを占有するので、余計にそこに置かなければならない理由が問い直されてくるのではないだろうか。


 PCが普及しだした頃とか、あるいはITブームと言われた頃は、PCやネットのインフラがそこに整備されているという環境が重視された。1人1台とか、PCを使えようが使えまいが、机の上に置かれてあるということが、IT化のステータスだったわけだ。
 しかしPCで行う業務内容がはっきりもせず、ただ社員の机の上にはあっても、PCの仕事に関係のない人は勤務中に仕事に関係のないWebページを見たり、それだけならまだよいがセキュリティに重大な影響を及ぼすことを無意識に行ってしまうということが増えて、あるときは社会問題化してしまう。人間だけを管理したり取り締まろうとしても限界があるというか、IT化の本末転倒のようにさえ思える。


 ノートPCは持ち出し問題があるから別の問題として、今後はデスクトップPCにはどんな存在意義があるのだろうか。ノートPCが使えるからもうデスクトップPCは不要というところもあるだろう。だが業務によっては、意味を変えながら必要とされ続ける場所はある。そのときのキーワードは、「シンクライアント」と「仮想化」のようである。

HPが語るデスクトップPCの変容--鍵は「仮想化」(CNET Japan)

今後はデクストップPCに、何でもアプリケーションソフトを導入したり、ローカルディスクやリムーバルディスクにデータを保存したりはしなくなる。Webサーバーにアクセスして、サービスを利用することがほとんどになるだろう。直接業務に関係のないソフトやデータと混乱することのないようにしたり、あるいは業務内容によって1台のクライアントPCでも使い分けしなければならない場面も出てくる。このような場合、1台のPCをあたかも別クライアントのようにする技術がシンクライアントと仮想化だろう。デスクトップPCをハードウェア機能からスリム化したシンクライアント専用機にまで徹底することもありうるが、通常のPCをUSBブートやCD/DVDブートさせて、HDにインストールされた環境はいっさい使わないこともありうる。


 またサーバーとの接続をするのに、データ保存も含めて、完全にWeb化されている場合ならよいが、そうでない場合でサーバーのデスクトップ環境を使いたい場合には仮想化を使えば、デスクトップ環境を1つのWindows画面のようにしてしまうことができる。クライアントのローカル環境と仮想化環境はむしろ行き来できない方がよい。具体的にはクライアントのWindowsの1画面として、Linuxサーバー側のX-Windows画面を表示させ操作できることである。商用ソフトではローカルのウィンドウと仮想画面のX-Window画面の間を自由にコピー&ペーストできるようなものもあるが、セキュリティ上はむしろ交信できない方がよいと思える。


 ノートPCに比べれば、大きなデスクトップPCに限定させたことしかやらせないのは、もったいないことのように思えたのも今は昔のことだろう。むしろ目に付いた場所にスペースを取って設置されているものだからこそ、この机のPCでは「こういう業務しかやらない」ということを徹底する方がよいだろう。もちろん机が違えば、また違った業務内容となっていてよい。昔は画一的に全く同じ環境のPCをただ台数を並べればよかっただろうが、今では同じPCでも机ごとに業務内容が異なるように作り込まれたものでよい。それを実現するのがシンクライアントや仮想化であり、セキュリティ・ポリシーであると考えられよう。