IGF第2弾・小川辛勝

 再び猪木が元気だ。IGF第1弾が終わっても次はあるかと言われていたが、第2弾も開催、超満員とまではいかなくともほぼ満員の興行だったようである。贅沢を言えばきりがないだろうが、所属選手を持たない団体としては、現状を考えればロートルが多いが、結構な選手は集められているようだ。問題はそれらの選手の噛み合い、その中で好ファイトを生み出せるかである。

猪木「世界最強」タイトル戦計画/IGF
詳細速報 <IGF9・8愛知>

少し出場選手のおさらいをしてみよう。試合がなくなったPRIDEに出ていた選手が多い。またそれ以前は猪木に協力的な選手、および元新日選手である。田村潔司は猪木の直接の影響はなく、前田日明の弟子である。高田延彦引退試合の相手も務めた。前田主宰のHERO'Sや桜庭との因縁などがからみ、田村自身は人気があるとはいえないが、猪木と前田の間のキーマンになりそうではある。


 アレク大塚は猪木系の興行には駆けつける前座選手、石川雄規バトラーツを主催していたが現在はフリー選手みたいなもののようである。猪木ファンでもあるが、カール・ゴッチの影響を受けた最後の日本人選手かもしれない。本名が豊彦なので、ゴッチからはトーイと呼ばれていた。ゴッチからすれば格闘技に関してはおもちゃのような存在だったかもしれない。


 小原と安田は元新日で、リストラされたという方が正確だろうか。その小原が今回はランデルマンに勝ってしまった。ランデルマンといえばPRIDEで、あのミルコ・クロコップに大番狂わせで勝って、あのヒョードルにもバックドロップを決めたことがある。安田忠夫は大相撲の出身で小結まで行ったが、K-1との対抗戦でジェロム・レ・バンナに勝ったことが唯一の実績だが、年齢のせいか不甲斐ない結果しか残せないようだ。大相撲といえば元関脇の若翔洋が格闘技に転向した。案の定、寝技と関節技には対応できなかった。


 前回、小川に負けたマーク・コールマンは元PRIDE王。最近は衰えのせいか、ハッスルや猪木に影響か、プロレス興行に真っ先に参加している。今回の小川の相手プレデターは、見かけはあのブルーザー・ブロディそのままである。チェーンを振り回すパフォーマンスまでしている。トム・ハワードと並んで、故・橋本真也がゼロワン時代に見出した選手で、プロレスラーとしてはなかなかいい味を出しているようだ。巨体に似合わぬスピーディで豪快な攻めで小川を苦しめたようだ。


 メインのジョシュ・バーネットドン・フライも猪木派の外国人選手である。ジョシュは最後にゴッチの影響を受けた外国人選手だとも言える。雑誌の企画でゴッチの自宅を訪ねて、教えを乞うていた。今回の決め技もゴッチ技だったという。ゴッチを尊敬するあたり、精神的には日本人的なあたりに人気がある。ただプロレス的かというと、ちょっと違うようだ。

ゴッチさんへバーネットが複合技/IGF

ドン・フライは猪木引退マッチの相手であり、当時から小川との因縁もある。荒っぽいファイトで豪快に見せる部分ではプロであるが、さすがに年齢的な衰えは隠せないようだ。


 そして日本人選手でいつも取り上げられるのは小川である。ヘビー級で外国人選手と対峙したときに見劣りしないのは小川だけであろう。ただプロレス路線か格闘技路線か、はっきりしないスタイルで試合がしょっぱいという辛口の批評が多いIGFでメインになれないのも、そのへんが関係しているだろう。


 そういえば、小川の後輩、金メダリストの吉田秀彦も、PRIDEがフジに打ち切られたことにより事実上消滅して、岐路に立たされている。PRIDEで小川をも破り順風な格闘技路線かと思いきや、思わぬことになり、現在は上がるリングがない状態である。
 一方、小川はオチャラケのハッスルから一時身を引き(旅に出たことになっている)、再び猪木のホラ吹きに乗ってみようかという気になっているようだ。橋本とタッグを組んでいた頃はともかく、ハッスルでのスタイルがプロとして望まれている姿とは思えない。勝敗もさることながら、ファンを引き付けるだけの名勝負が必要である。ここが小川にとっても最後の勝負所かもしれない。

 小川にしろ吉田にしろ、現在は自分の柔道の道場を開いているのだが、その運営のためにもまだまだ自らのファイトで稼がなければならないだろう。


 そういえば今日は、三沢vs藤波の元全日vs元新日社長対決があったそうだ。馬場・猪木の冷戦時代の影響で、この年齢で初対決である。これはこれでクラシックなプロレスの匂いがする。