AjaxWindowsとは何か

 Webベースの様々なサービスが出現しているが、AjaxWindowsというものがあるそうだ。名前の通り、Ajaxを用いてWeb上に仮想的なWindowsのデスクトップを実現してしまおうというものである。

WebOS「AjaxWindows」に私は疑問を抱いている (@IT)
Is the World Ready for a Web-Based Desktop? (原文)
AjaxWindowsサイト

 いわゆるSaaS型のサービスだが、提供されるものがデスクトップ画面である。現状で言えばローカル環境をあまり使わないという点ではシンクライアントである。このような発想はシンクライアント、仮想化、Web2.0という時代の流れの中で、特に際立ったアイデアではないだろう。Ajaxの表現力でどこまでやるのかという問題である。また何を目的にするかが問題である。記事では疑問を投げかけているが、現在はWeb2.0時代への過度期であり、固定観念的な批評だけしても始まらない


 かつてはコマンドの画面からWindowsデスクトップを起動した。Windows95以降は逆にコマンド画面を仮想化した。またWindowsデスクトップからWebブラウザを起動した。ところがAjaxWindowsでは、逆にWebブラウザからWindowsデスクトップを仮想化するというもののようである。何もそこまでWindowsにこだわらなくてよさそうなものだが、Windowsにだけ慣れてしまっている多くのユーザを取り込もうとすれば、そういう発想になるのだろう。ユーザ側からすれば、必ず実のWindowsデスクトップとの機能の比較をするだろう。機能の豊富さはどうか、パフォーマンスがどうか、互換性はどうかなどである。作成したデータはネット上に置くのは不安だから、やはりローカルドライブの方がよいのではないかという疑問もその1つであろう。しかしそれは、Windowsやデスクトップとかの固定観念に囚われすぎだろう。


 UNIXLinuxをサーバーとして、Windowsの中のウィンドウの1つとしてX-Windowのデスクトップを仮想化して実現するものには、VNC(Virtual Network Computing)というフリーソフトがある。LinuxのXサーバーに接続すれば遠隔地からでもPCをXクライアントにすることができる。むしろこれはUNIXのX-Windowの原点の姿である。それに似た環境が現在ではWebベースになったと考えればよいのではないか。


 やっぱりローカルドライブの方がよいという疑問は、目的によるだろう。プライベートな目的ならばそういう自由度がある方がビデオや音楽CDのように「所有している」という安心感が得られるのだろうが、それも固定観念のように思える。業務目的ならば、情報漏えい問題などがあるので、データは完全にサーバーで管理した方がよい。シンクライアントならばクライアントの機能を制限する方が当然である。ローカルのデスクトップならば、ユーザが勝手に余分なソフトウェアを入れたりでセキュリティが落ちるからである。


 要はWebベースになることで、ユーザ単位、目的ごとに柔軟に機能をカスタマイズできる可能性があるのではないだろうか。WindowsデスクトップをWeb上で仮想化するという発想は、現在はWindowsデスクトップを見慣れているからということに過ぎない。今後さまざまなSaaSが登場して、ユーザによって次第に淘汰され、いずれ本命が現れるということになるだろう。