IBM Lotusもフリーのオフィススイート

 GoogleSaaS型Officeが形になったところで、今度はあのIBMがデスクトップ版のオフィススイートをフリーソフトにして公開した。これは現状の流れの中で、どういう意味合いを持ってくるのだろうか。

IBMがフリーのオフィススイート「Lotus Symphony」発表(@IT)
IBM、無償オフィススイート「Lotus Symphony」を提供開始(ITmedia)

 IBMというより、LotusといえばグループウェアのNotesと、もっと前は表計算ソフトのLotus1-2-3である。Lotus1-2-3はMicrosoft Excelに駆逐されてしまったといえ、Notesはインターネット/イントラネットの波に飲み込まれてしまったといえる。ただIBM自体は、すでにモノを売るより、企業ユーザ対象のサポートが主体になっており、その中でシステム提案する手段がNotesになっている。開発の世界などとは異なり、「ここはこういう仕事だけ」というデスクトップ的定型業務が支配する世界である。その中でもOfficeは、やっぱりMicrosoft Officeになっているのが普通である。Notesが導入されているから、OfficeもLotusという話は聞かない。外部にも通用する文書形式ということを考えれば、それはMicrosoft Officeになるからである。


 Officeソフトの先駆けになったのはワープロソフトとLotus1-2-3である。しかしこればコマンドのMS-DOS時代に全盛だったといえ、Windows時代になってからは急速にExcelの1人勝ちになり、それがMicrosoft Officeの独占を生む要因にもなっている。以前は公文書でデータも公開されるときには、Lotus1-2-3とExcelのファイルの両方が提供されていたものだった。国内ではワープロ一太郎も同じような立場だった。


 時代は変わり、Lotus1-2-3はNotesのオマケのような立場になり、使っている人もあまりいるとは思えないが、IBMもついにOfficeスイートをオープンソース路線に切り替えたようだ。というのは、名前の上ではこれまでのLotusのOfficeスイートをフリー化したように思えるが、実際にはOpenOffice.orgをベースに開発し直したものらしい。それにこれまでのLotusの名称を付けたというものだ。ある意味、過去のソフトへの決別をしたとも言える。
 今回の発表の1週間前には、OpenOffice.orgコミュニティへの参加も表明していることからも明らかである。

米IBMがOpenOffice開発コミュニティに参加

 OpenOffice.org陣営から見れば、企業向け製品とサポートを持つIBMの参加は大きい。OpenOffice.orgといっても、もともとはSunのStarOfficeが元になっており、スポンサーにSunとIBMが加わったことになる。そしてこれはGoogleドキュメントを含めて、もはやソフトウェアの単純な優劣の問題ではなく、ODFかOpen XMLかのOfficeの文書の標準フォーマットの争いである。たとえ両方とも標準になったとしても(現状ではODFのみだが)、現実にはどちらかのフォーマットに偏る結果になるだろう。


 昔は文書フォーマットの選択とは即ソフトウェアの種類の違いを意味していた。今後は、このままMicrosoft Officeのみを使い続けるのか、他のオフィスソフトやSaaS型ののオフィスでも自由に使えるようになるのかの選択になるだろう。Web2.0時代を考えれば、当然後者であるとは思うのだが。