データセンターの温室効果ガス排出

 やはりコンピュータやネットも問題視されるようになってくるのだろうか。地球温暖化抑止がブーム化している現在、エネルギーを消費して情報を処理するコンピュータやネットもその例外ではないようだ。だが対策となると、あまりはっきりしていないようだ。

データセンターの温室効果ガス排出量、情報技術業界の23% (ITmedia)

 データセンターのような規模になると、コンピュータ本体ばかりでなく、設備の空調であるとか24時間監視システムなどで多くの電力を消費する。単純にコンピュータの消費電力だけを小さくできればよいという問題ではない。同じ轍を踏めば、情報発電所といわれ、いまや50万台とも60万台とも言われるサーバー群を有しているGoogleが最も温室効果ガスを排出している元凶であるということになる。
 対策として「コンピュータは使うな」というのは、現代社会では車を使うな、電気を使うなということと同様である。現代文明は、ますますこれらに依存していくことになるわけだから、声高に使用を制限するような主張は誰にもできない。


 けれども、車の方はエコカーであるとか、電気自動車であるとか、従来のガソリン燃焼ほど熱を排出しないメカが実現されてきており、スピードをある程度犠牲にすれば、ガス排出を減少させることができそうである。コンピュータについても、ここにヒントがあるかもしれない。


 まずはコンピュータの原理である。なぜコンピュータ、特にCPUはなぜ熱を発生するのかといえば、情報が不可逆だからである。たとえば、2つの値の入力から、ANDかORの値が出力されたとすると、その出力から、元の2つの入力値は再現できない。だから不可逆であり、情報が失われ、エントロピーが増加して、それがエネルギー的には熱が発生ということになる。集積回路には莫大な数の回路が存在するから、集積度が大きいほど熱量の発生も多くなる。またそれを冷却するための装置も電力を消費して、外部に熱を放出することになる。


 これを改善するには、不可逆でない「情報が可逆なコンピュータ」を作ればよいのである。2つの入力に対しては2つの出力があり、情報は失われない。処理に必要な結果は1つの出力だけを利用し、もう1つの出力は冗長な出力だとすればよい。エントロピーは増加しないから、原理的には熱の発生もしない。ただ回路の処理を進めるには、ほんの少し電圧をかけてやる必要だけがある。


 可逆コンピュータは、いわゆる量子コンピュータの元になった考え方である。電子や分子レベルではエントロピーは増加しない。だからこの大きさのスケールでコンピュータの論理を実現できれば、計算速度をある程度犠牲にすれば、熱を出さないコンピュータを作ることができるようになる。究極の省エネ型のコンピュータには、量子コンピュータを目指せ、ということになるかもしれない。