ゴア前副大統領にノーベル平和賞

 ゴア氏に、地球温暖化問題に早くから取り組んできた功績に対してノーベル平和賞が贈られた。一部では賛否両論もあるようだが、もともと平和賞は学術的賞と異なり、その時代における果たした役割を評価される賞だから、いいのじゃないかとは思う。

ノーベル平和賞、気候変動問題でIPCCとゴア氏に(CNN.co.jp)

 ゴア氏といえば、ブッシュ大統領との大統領選に僅差で破れたという経緯があるが、歴史にたらればは禁物だが、もしあのとき民主党・ゴア大統領になっていたら、イラク戦争はなかっただろうと言われるし、ひょっとしたらニューヨークのテロも発生していなかったかもしれない。政治面はともかく、今回の受賞対象の地球温暖化問題だけでなく、クリントン政権時代の「情報スーパーハイウェイ計画」の先見性が思い出される。


 あの時点で米国の国策として、あのまま本格的に情報通信、ITで突っ走られたら、もはや日本などは追いつけないほど情報格差を付けられていたかもしれない。あの時点ではまだ夢物語だと思われていたことが、10年も経たずにインターネットによって現実のものとなった。当時の日本は慌てて、2010年頃の計画だった基幹の光ファイバーの敷設を、とにかく前倒しで実現させたことが功を奏して、かろうじてインターネット時代に対応できたといえる。


 そして幸か不幸か、ゴアではなくブッシュ大統領になったおかげで、古い時代の米国に揺り戻しが来たために、インターネットでそれほど差を付けられずに日本は助かったと、以前、元通産省官僚から聞いたことがある。そして米国政府はITのことよりも戦争の方に関心が行ってしまったということだ。


 さらに地球温暖化問題では、日本が主導的な役割を果たした京都議定書からは、ブッシュ政権下の米国は離脱している。昨今の地球温暖化問題への世界的関心の高まりから、米国の姿勢は批判されるようになっている。日本は京都に引き続き、来年夏の洞爺湖サミットでもリードしたいようだが、このゴア氏の受賞を機に、米国がこの問題について主導的役割を果たすように姿勢を転換してくるのではないかと予想され始めてきた。地球温暖化問題への取り組みが大統領選の大きな争点になりそうであるし、これまでのブッシュ政権への批判から民主党が政権を奪い返す可能性が高い。再びゴア氏を大統領候補にという声さえある。仮にヒラリー・クリントンであっても、ゴア氏が地球環境問題の責任者のポストに付くことが確実視されるとのことである。


 その頃、日本では地球規模のグローバルな視野を持つリーダーが登場しているのだろうか。相変わらず年金の記載漏れだとか、政治家の事務所経費がどうのとか、やっているわけにもいかないだろう。