Linuxサーバ市場の成長が鈍化?

 米国IDCの調査によると、Linuxのサーバ市場はWindows サーバに対して鈍化しているのだという。一方、Linuxコミュニティ側はこの調査結果の解釈に異議を唱えているという。
 あまり真面目に捉える気にもならないが、以前にも、サーバ市場の売り上げはやっぱりWindowsがトップ、などというLinuxオープンソースであることを完全に無視したような調査結果記事があった。さて、今回の調査結果はどう捉えたらよいのだろうか。

Linuxコミュニティ、x86サーバ市場の調査結果に異議申し立て(@IT)
Linuxサーバの成長鈍化、UNIXからの“燃料投下”なくなる

 これまで、Linuxが集中して導入されてきたのは、かつてUNIXワークステーションを導入してきた組織やNetWareを導入してきた組織(Novellの顧客か?)だったが、それらの需要がほぼ満たされたので、Linuxサーバの新規導入はそろそろ頭打ちになってきたようだ、というのが解釈の趣旨らしい。


 しかしそれはもう17-8年くらい前からLANなどを導入している、おそらく金持ち企業だけの話だろう。まだ10年も経っていないGoogleだの、国内でいえばmixiなどのスケールを持った新興企業が、コストのかからないインターネットサーバとしてLinuxを導入して、大きくビジネス展開をしてきたことを見れば、十分の話ではないか。安価なPCサーバを出荷するDellも、Linuxをプリインストールする注文が増え続けていることを認めている。


 ウォッチャーなどは、あまり現場の実情を知らずに、出荷額とか有償のマシンの出荷台数だけを見て、こんな判断をしているとしか思えない。なかなかWindowsを捨てることもできないのは現実であるが、一度Linuxに移行した現場で、再びWindows環境に戻したという話は、ほとんど聞いたことがない


 そしてかつてはクライアント使用目的で、Windowsなんとかがプリインストールされていた非力PCがLinuxサーバに転用されている例はいくらでもある。現に自分自身も、そういう発想で何ヶ所でもLinuxを導入して、LANの中でイントラネットサーバのように使っているケースが多くある。自宅PCなどは言わずもがなである。


 「ファイルサーバ/プリントサーバなどの広範囲なサーバとしてはみなされていない」などというのはいつの話だと言いたくなる。単純なファイル共有などは、今のセキュリティ重視の時代にあっては、たとえ社内だけであっても時代遅れだし、印刷だったらプリントサーバなどを通さずにネットワークプリンタで十分だろう。社内であっても、ほとんどはWeb経由、すなわちLAMPで構成するのが普通になっている。どうしてもファイルサーバも使いたければSambaサーバで、Windowsドメイン認証からでもやらせることもできる。率直に言って、Linuxは金をかけずにネットに関することは、ほとんど何でもやることが可能だ。Windowsでは制約が大きすぎて、労と経費が多くして益少なしといったところである。


 内部でそれらを行うスキルのない組織は、今ではGoogle AppsWebサービスを使って、外部にイントラネットを作るような選択肢もあるようになった。むしろ今後はWindowsサーバが競合するのは、こちらの方になるだろう。


 そして組織が現状ではWindowsサーバを捨てられない理由、それはWindowsサーバが優秀だからでも、Linuxが非力だからでもなく、クライアントのWindowsが捨てられないからである。つまりサーバ運用側の都合よりもユーザ側の都合による。ユーザ側の都合とは、Officeが業務の標準になっているからである。クライアントをLinuxに移行して、フリーのOpenOffice.orgにすぐに移行して下さい、とはなかなかならないだろう。


 しかしその現実も、Web2.0時代になって変革される段階に差し掛かっているように見える。Webアプリで一般業務が可能になってしまえば、もはやクライアントもサーバもWindowsである必要はなくなる。というより、コスト面を考えれば、もはやLinuxしか選択の余地はなくなるだろうとさえ思える。