SaaS化を進行させるAdobe 

 発表したのにもかかわらず、まだWebアプリ版のPhotoshopを公表していないAdobeだが、コンファレンスの席上、いろいろと同社の方向性をアピールしていたようだ。

Adobe AIRが備える「Windowsが凋落する日」(@IT)
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 まず、AIRAdobe Integrated Runtime)とは、Web技術を活用してデスクトップアプリケーションを稼働させられる統合ランタイムだということである。Adobeのアプリケーションを実行するJava仮想マシンのようなものだろうか。Microsoftなら.NETみたいなものだろう。
 Adobeの場合は、これまで主力になってきたソフトウェアやファイル形式からなんとなく方向が見えそうではある。Photoshop、PDF文書、Flashアニメ、Flashビデオなどをベースにするものである。そこに最近買収したオンラインワープロBuzzwordである。
 アプリケーションで文書を作成するにしろ画像やビデオを含むマルチメディアファイルを出力させるにしろ、Flash形式でWebで閲覧、印刷はPDF出力というように、標準ファイル形式の元祖の強みを発揮したいところのようだ。


 もともとAdobeがベースにするOSは、デザイン系に強いというMacintoshからWindowsへ、そしてWeb時代になってLinux(クライアントで有望なものはUbuntu)を含めた広いプラットフォームに進出し、それらの環境で共通に提供できる形にすること、つまりSaaS化を目指すことを明確にしてきたようだ。


 ただAdobeはどちらかといえば、高いデスクトップパッケージソフトを買ってもらうスタイルだったわけだから、無償のWebサービスに移行させて、ビジネスとして成り立つかどうかが最大の問題である。アプリケーションメーカーとして、ちょうどOSとデスクトップ中心のMicrosoftと、ネットサービスだけのGoogleとの中間的立場にあるように思える。それだけに、AdobeがデスクトップからWebサービスへと完全に舵を切れば、アプリケーション全体に与える影響は大きい。すなわちMicrosoftを除いて、ほとんどのソフトメーカーはSaaSへと移行するようになるだろう。


 そのとき、本当にOSはなんでもよくなる。というより、Windowsの呪縛から解放されると言うべきか。本来の、PCを起動させるためにBIOSと並ぶ、単に縁の下の力持ちに戻るということになるだろう。