WebメールのSNS化

 Yahoo!GoogleWebメールSNS化するアイデアを持っているという。これは自然な流れのようにも思う。Webであることと、ユーザ数が莫大な数になっている両サービスにとって、これを生かさない手はないはずであるし、もはや従来的な意味でのメールから脱皮して進化する段階にきていると思われるからである。

GoogleとYahoo!、WebメールをSNS化へ (ITmedia)

 メールはインターネットの中では古くて新しいサービスだが、考えてみれば送信と受信をタイムラグがありながら利用しているもので、いわば半二重通信のようなものである。テキストエディタのようなシンプルなメールソフトでやっていた時代ならともかく、現在ははるかに表現力のあるWebがメールの標準的なプラットフォームとなっている。ちょっとした文面のやりとりをメール機能というのであれば、Webに書かれた掲示板やチャットやブログと、最近ではTwitterなるものもあり、それらを時間を置いて相手と交互に見ることでもたいした変わらないだろうということになる。


 またかつてはメールの発展形として、メーリングリストだとかニューズグループを捉えることもあった。そして組織内では、メールを中心としてそこにグループウェアというものを構築した。しかしグループウェアIBMLotus Notesのことであるかのように矮小化されて、何かネットの世界の中のことからは遊離した存在になったような気がする。社内には社内のルールがあると言ってしまえばそれまでだが、何やらNotesという型にはまったスタイルに社内業務の方を無理に合わせているような感じで、事務方主導で一時期使わされたことがあったが、自分は嫌悪感さえ覚えることもあった。イントラネット登場とともにグループウェアのブームなどは10年以上前に吹き飛んでしまったと認識しているが、Web2.0の声とともに登場したSNSは、Webの形になったグループウェアがリニューアルして再来してきたという感じがする。あるいはイントラネットをWebで再構築する時代になったと言ってもよいかもしれない。


 GmailにしろYahoo!メールにしろ、メール容量が無制限といっても、個人で意味もなく巨大なメールを扱うわけではない。それだけの容量が使えるのであれば、個人というよりグループの情報交換にその容量を使えないかと考えるのは自然である。その方向としてGoogleグループがあるが、容量の上限は100MBに抑えられており、SNS的にもやや中途半端である。Yahoo!グループについても同様であろう。


 またそれ以前に、SNSmixiなどの普及の結果、やたら世間一般のコミュニティを作るものという観念が先立ちすぎて、あらたまったテーマを持たないとSNSは使えないのではないかと思いがちになる。しかしイントラネットなどは、社内や学内のように、本来部外者が入らないのが原則のところに構成するネットの仕組みである。とりあえず関係者の連絡網を構成するような話からでよいはずである。従来であれば、それが個々のメールだった。cc:を付ける範囲の人とか、返信はどの範囲の人にまでするかとか、案外メールの利用の判断はわずらわしい。メーリングリストのお知らせメールのアドレスに、個人情報までを載せたメールを誤ってメンバー全員に返信してしまう間違いをする人を見かけたりもした。またメールは個人のスタイルや流儀に依存するところが大きすぎるのが問題であるような気がする。


 そして決定的なのは、外部スパムメールの増加である。組織として何もスパム対策がなされていないと、膨大な数のスパムのゴミの中からほんのわずかな重要なメールを探し出すということになりかねない。スパムフィルタの能力云々などは事の本質ではない。少なくともネットの中で重要な人同士は、なんらかのSNSで繋がっているべきだろう。日常、スパムと同レベルのメールの扱いになること自体、もはやおかしなことである。昔は「社内」とか「LANの中」という物理的、地理的に制限を加えられたグループだったが、現在はWebを介してネットの中の局所グループを作ることができる。そのベースがWebメールのユーザの集団になるということだろう。


 ただ、ユーザ数が膨大であるからといって、たとえば既存のGoogleの一般ユーザのコミュニティに参加して仲間になりたいというわけではないGoogleのサービス群を利用して、それぞれのグループが自分達にとって都合のよいネットの中の情報流通の形が作れればよいだけなのである。SNSというもので「ネット上でお友達を作りたい」などという発想は、ネット初心者か「この田舎者が」と言いたくなるくらいである。