SaaSはASPと同じ?

 Web2.0時代になって、何でもWebを介してサーバー側でやらせることが可能になってきて、これをSaaS(Software as a Service)と言うようになってきているが、そこでにわかに活気付いてきたのがASP(Application Service Provider)業界らしい。確かにインターネット初期の頃から、レンタルサーバーの運営のように、企業個別にサーバーや業務ソフトを導入しなくても、Webなどを介して業務処理ができてしまうというものだった。だが、それが今のSaaSと差のないものになったと言うのは、やや違和感を覚える。

SaaSとASPはもう区別がつかない状態、団体名も変更へ〜ASPIC (@IT)

 ASPはもともとはOracleの元会長が新たなベンチャーとして立ち上げたのが最初で、ISPが通信回線サービスのみの提供するのに対して、ASPは業務ソフトをネットサービスとして提供するものだった。当時としてはCGIですべてやっていたのではないかと思う。
 その後、ネットの世界はJavaによるeコマースの発展、LAMPによるシステム、AjaxからWeb2.0などと発展してきている。表面的には、Webによるサーバーサイド中心に提供されるサービスだから、ASPと同じようなものになったと言いたいのかもしれないが、その後どう展開したか知らないのだが、ASPSaaSと同じようなものであるというのは当たらないのではないだろうか。


 たとえば古いASP企業の提供するサービスと、Googleが提供するネットサービスとが同じようなものと言えるのだろうか。一方は初めから有料のネットサービスであり、Googleの方は全く別のビジネスモデルの下でそれらを提供しているものである。一方は事業者向け特定個別サービスであり、Googleなどは汎用的サービスである。何よりWeb2.0的なのであるかどうか。まあWeb2.0は諸説ぷんぷんだからともかくとして、ASPサービスから、現在のSaaSに至った流れが生まれたとは考えにくいのである。


 SNSグループウェアの再来ではないかという言い方をするのも、昔のグループウェアLotus NotesからSNSが発展したということではない。別の流れから生まれてきたSNSが、かつてのグループウェアでは成しえなかったことまで飲み込んでしまうのではないかという期待感なのである。Notesは10年以上前からSNSをやっていましたということではない
 同様に昔のASPは10年も前からSaaSをやっていました。今では同じ言葉になりました、と言われても受け入れがたいのである。


 なお、紛らわしい言葉にMicrosoftASP(Active Server Pages)がある。こちらもASP.NETに名称は同じでも大幅に仕様変更されたようで、開発者にとってはふざけんなというところだっただろう。これもWebサービスのためのMicrosoftの技術用語であることには違いはない。しかしあくまでMicrosoft仕様の中だけの話であり、やはりWeb2.0につながる話だとは考えにくいだろう。