Vistaの企業導入は進まず

 Microsoft大本営発表はともかく、予想通りWindows Vistaの組織への導入はなかなか進んでいないようだ。マイブーム的にもデスクトップはUbuntu Linuxなのだが、米国の話とはいえ、ほぼこの記事での評価はほぼ現状をよく衝いているだろう。

まもなく発売1周年の「Windows Vista」、企業の導入進まず(CNET Japan)

 組織としてはWindowsというよりも、Officeから離れるわけにはいかない。といって今のXPを捨てて、Vistaにしなければならない必然性は何もない。それどころかVistaにしたおかげで、これまでちゃんと動いていた業務ソフトが急に動かなくなるリスクさえあるからだ。業務ソフトは2000やXPでは動作が保証されるように作られているが、Microsoftが勝手に仕様変更したVistaの環境で動作する保証はどこにもない。基幹業務であればあるほど、Vistaに移行することはできないだろう。


 以前であれば「業務のIT化」と称して、それまでネットが本格導入されていなかった部署への新規導入の需要もあっただろうが、現在のようにどこでもネットに繋がっている環境では、PCのリース期限切れでもなければ、何のためにVistaに入れ替えろというのだろうか。企画書を書く立場になってみれば「新製品が出ましたからウチでも入れましょう」では受け入れられまい。業務上の理由からVistaをどうしても導入する必要があるという説明ができなければならない。ところがXPではできなくてVistaでしかできない業務など存在しない。それどころか、当たり前に動いていたOfficeでさえもVistaでは、CPUがCore Duo以上だ、メモリが2GBだ、HDD160GB以上だ、などとリソースばかり浪費するように見える。Vistaの方がセキュリティがよい、というのならば、Microsoftは自らXPはセキュリティがだめだと宣言しているようなものである。


 なおかつ世の中はWeb2.0の時代で、OSの種類はあまり関係なくて、Vistaへアップグレードすべきかどうかよりは、現在の業務をいかにWebベースに移行させるかという方が大きな関心事である。例を挙げれば、Visual Basicで稼動してきたシステムをWebベースにしたいとか、Lotus NotesでやってきたグループウェアをWebベースにできないかなどということがあるだろう。そのとき、あくまでMicrosoftとかIBMとかに引き続いて、お伺いを立てていかなければならないのだろうかという疑問が残る。


 さてUbuntu Linuxとかが、現実にVistaの代替になりうるかという点だが、どちらとも言えることだろう。業務内容によって、どうしてもピュアなOfficeがなければならないところではWindowsを入れればよいだろうし、もっとクリエイティブな業務をする場所では、デスクトップからLinuxにしてしまうこともありであると思う。Officeというより、ネットで何か仕事をすることが目的なのであればLinuxで十分である。


 それから現在では仮想マシンの環境というものがある。Linuxに移行してもよいが、場面によってはやはりWindowsは必要だという場合、いっそホストOSをLinuxにしてゲストOSをWindows XPにしたらどうだろうかWindowsのパフォーマンスは落ちるが、必要性としては十分であると思う。


 LinuxWindowsと競合するOSという位置づけではなく、携帯のGoogle Androidも含めて、Web2.0が進行する上で「空気」のような存在になりつつある。Linuxを特別に意識することなく、PCにも携帯にも組込みにも、いつのまにか必要な存在になってきている。OSの仕様の都合が業務の内容にも影響するなどというのは、もはや前近代的な話である。