混迷を深めるYahoo!買収

 MicrosoftYahoo!に対して、3週間以内に決断せよと迫ったことから、いよいよYahoo!の命運が決まる時期が近づいているようだ。それに対抗するように、Time WarnerとNews Corp.およびGoogleの動きも慌しくなっている。

[WSJ]Yahoo!、AOLと事業統合で近く合意か (ITmedia)
MSとNews Corp.、Yahoo!の共同買収で話し合い (ITmedia)

 Time Warner傘下のAOLとYahoo!の統合も交渉に入っている。またNews Corp.もMicrosoftYahoo!の阻止に動くかと思われたが、一転MicrosftとのYahoo!の共同買収を検討しているともいわれる。Googleは広告部門でのYahoo!との提携への動きを見せている。どれが本気で、どれが自社を有利な状況に導こうとするポーズなのか、わからない状態である。MicrosoftYahoo!買収は本気だろうが、Yahoo!に対する評価額が低すぎるから拒否という態度に、簡単に買収額を吊り上げる気はないようだ。ところが買収を阻止して、自社と経営統合させようとする側はポーズなのかもしれないが、それに対してMicrosoftが買収額を上げれば、買収のリスクと負担を大きくさせ、Microsoftにもダメージを与えられると踏んでいるのかもしれない。いずれにしても、Yahoo!の株主と自社の株主が有利になるような条件の提示ということで、虚虚実実の駆け引きが行われているのだろう。


 しかし、Yahoo!ほどネットを通じて世界的にも影響力のある組織が、株主だからとはいえ、彼らの利益だけを優先して命運が決まっていいものかとも思う。もはや公共性の高いものになっているからである。たとえれば、村上ファンド阪神電鉄の株を買収するのではないかという時に、野球の阪神ファンから大ブーイングを受けた。子会社である阪神球団は、たとえ誰かが株を買い占めたとしても、もはや社会的には球団は株主だけの物ではないという意識が強いからである。


 ITの組織は歴史も浅いからそれほどでもないかもしれないが、やはり文化の違う組織の中に組み入れられるのは、ユーザ側にも抵抗が大きいことはありうる。国内ではファンドによる買収よりも、政党再編の方が感覚的には近いかもしれない。あの党とこの党が一緒になったら、あなたは支持できますか、というようなものである。MicrosoftYahoo!の大連立が実現したら、あなたは支持できますかということである。自分はYahoo!単独のときにはそれなりに支持したいが、大連立したり吸収合併されたらノーである。