Web2.0の成功とVistaの失敗

 Web2.0が進展してくるにつれて、ますますWindows Vistaの方向性とは相反することになって行きそうである。本当にVistaを導入して何かがよくなったというような話は聞いたためしがない。単なる好悪の問題ではなく、ネット時代を逆行している感があるからである。それがPCの世界ではコモディティ化しているWindowsだけに、ユーザにとっても頭が痛い。

壊れたWindowsは直せない (ITmedia)
Vistaに見切りをつけたMicrosoft (ITmedia)

 Windowsコモディティ化したとはどういうことか。Windowsでなければ実行できないソフトウェアとかゲームは、かつてスタンドアローンPCの時代にはあった。ネットの時代になり、サービスはネットの向こう側のサーバによって実行されて結果を受け取るだけだがら、クライアント側に置くソフトウェアの重要性は低下した。OSも例外ではない。Macだ、Windowsだ、OS/2だ、その他だとOS戦争があったことは、今は昔の話である。OSは極端な話、PCを起動してネットへの接続さえ、つつがなくやってくれれば、あとはほとんど注目すらしない。ちょうどBIOSなどと同様の位置づけなのである。それを今でも、新しいOSにバージョンアップします、と言われても、新しいOSで何をやろういうのか、全く期待もしていない。


 すでに大多数の人は、デスクトップで何かをやることを期待するよりも、ネットを活用することの方が関心事であるし、Web2.0はWebを介してのサービスだからOSには無関係である。それがVistaでなければ受けられないネットサービスのようなものがあったとしたら、時代錯誤としか言いようがない。XPからVistaに移行したら、ネットサービスを受けるためのパフォーマンスが低下した、などということであればVistaWeb2.0時代へ向かうことを妨害していることにしかならない。いや、意図的かどうかはともかく、実際にそれに近い状況かもしれない。


 Vistaを入れればセキュリティが高くなるといっても、クライアントに何でも詰め込んでセキュリティを高めようとするよりは、基本的にはクライアントでは何もやらせないという、シンクライアントの方向性がもはや主流になっている。それに対して激重のVistaでは、動きの鈍いファットクライアントを作っているだけである。まさに時代に逆行である。最近流行のメタボリックシンドロームに例えるのは、言い当て妙というものだろう。。Microsoftの内部の人間ですら、建前はともかく気がついているはずである。いわく「Vistaはすでに死んでいる」。そのせいかどうか、すでに次期のWindows 7の話が始まっているという。けれども今のような体制では、またおかしなものをユーザに押し付けようとすることを繰り返すだけだろう。


 Web2.0の時代と重なり、もはやWindowsそのものの重要性は低下してきている。今後再びOSが重要という時代には戻らないだろう。Windowsを無理やりネットサービスに適合させようとする試みもやらない方がよいだろう。OSのバージョンアップだけでも現在は混乱しているわけだから、それにさらに輪をかけてネット時代を混乱に陥れることにしかならないだろう。