Microsoftの後悔

 Yahoo!に強引な買収を仕掛けているMicrosoftだが、その動機には2年前のYouTubeの買収に失敗し、Googleにさらわれたことへの後悔があるのではないかという見方がある。

MSが逃した魚は本当に大きかった (ITmedia)
バルマーCEO、Yahoo!買収提案を後悔?

 MicrosoftYouTubeを買収をしようとしたときには、買収額のこともあるが、YouTubeのようなサイトを自社開発できるという間違った選択肢を意識してしまったということである。今となってはそのような判断が全く滑稽な判断だったと見られるだろう。Googleに買収された後のYouTubeは、バックにGoogleがいるという信用(最悪でもGoogle相手に訴訟ができる)もあり、ますます動画サイトとしては、水を得た魚のように断トツのシェアを獲得している。広告収益には、なるべく長時間のサイト滞在率が重要になる。一方でGoogle検索などは、多くのユーザになるべく短い時間の滞在率で、目的のサイトに飛んでいってもらった方がいい。前者はページビューを上げ、後者はユニークユーザ数を上げることに貢献するので、Googleのユーザ獲得率はYahoo!も含めた他のすべてのサイトよりも、はるかに上回っていくことになる。


 Microsoftは判断を誤り、YouTubeを獲得できなかった悔恨から、なんとかNO2のYahoo!を手に入れて巻き返しを図りたいという考えなのだろうという推測である。
 しかし、Google傘下になったYouTubeが獲得しているユーザの数が、もしMicrosoftが買収に成功していた場合でもそのまま同じになっていたかとは一概には言えないように思う。それはやはり組織の体質である。YouTubeも買収額が低かったからだけではなく、Microsoftとの体質が合わないことが買収を拒否したことにあったのではないか。確かによほどの大金を積まれたとしたら、すべてを放り出して会社を売って、今度はその資金で全く新たなベンチャービジネスを立ち上げていたかもしれない。実際初めから大企業に会社を売ることを目的にして起業するベンチャーもある。そうではなく、現状の自分たちの発想のままで、YouTubeを存続させるという選択が可能だったことが、Googleの買収に応じた最大の理由だったろう。現状では、その目論見通りにYouTubeを発展させることができている。Microsoft相手だったとしたら、そうはうまくはいっていなかっただろう。


 同じことはYahoo!にも言えるだろう。業績が落ち目だとはいえ、独自性を保っていられらば、まだ発展の可能性はあるが、従来的なMicrosoftの風土に取り込まれてしまえば、Yahoo!の勢いは落ち、一流の技術者たちは離反し出すだろう。そうなれば、そのうちYahoo!そのものが忘れ去られていく恐れもある。