Red HatがデスクトップLinuxから撤退

 商用LinuxではシェアがトップのRed Hatが、一般向けのデスクトップLinuxは開発しない方向であることを明言した。すでに一般向けのLinuxの開発はFedoraプロジェクトと分離しているから、実質的な影響はないとみられる。

Red Hat、「一般向けデスクトップLinuxは開発しない」と明言 (ITmedia)
レッドハット,Linuxデスクトップで方針転換 (ITpro)

 Red HatLinus Torvaldsが開発したLinuxが、当初はマニアックな開発者のみが扱うものだったものを商用ベースにも乗せ、同時にソースも公開してきたことから、インターネット時代に一気にLinuxをメジャーに押し上げた功績があったといえる。Microsoftから見れば、目の上のタンコブの1つであったことには間違いがない。Red Hatに対抗するために、現在では欧州市場を中心にSUSE Linuxを持つNovellと提携しているようなものだ。


 Red Hat Linuxは、Version 5くらいからインストールしてみた経験があるが、GUIやX-Windowはすぐに固まるわ、グダグダだった印象しかない。少なくともWindowsしか経験がなく、コマンドなどの経験もないようなユーザには勧められるような代物ではなかった。さらに日本語環境には全くRed Hatは配慮していなかった。こうしたことから、Red Hat Linuxをなんとかデスクトップ環境で、日本語でも使えるようにと日本で生まれたのが、Laser5であり(今はもうない)、Vine Linuxであった。


 その後、Red Hatの日本語版も出てはいるのだが、デスクトップの使いにくさとかパフォーマンスの悪さは相変わらずであった。それでもさほどLinuxの世界では苦情が出ないのは、Vine Linuxなどの他のディストリビューションの選択肢があったことと、なによりRed Hat Linuxなどはサーバ用途に使えばよいというのが常識であったからである。サーバ用途であれば、X-Windowそのものをインストールする必要すらないからである。デスクトップが使いにくいなどと文句を言う人はWindowsに毒されていて、PCはグラフックスでしか使わないものだと信じている人だからである。


 事実上、Red Hatを含めたLinuxは、インターネットのサーバ市場で、SunのワークステーションWindows Serverを圧倒した。ただクライアントLinuxとなると、使いにくさと上記のようなユーザ層が異なるために、なかなか普及はしなかった。企業ユーザでも、Office文書の互換性のこともあるから、WindowsからLinuxへの鞍替えはあまりにも冒険すぎる。そのうちに、サーバLinux、クライアントWindowsのネットワーク構成が常態化していったようである。


 そして現在では、Fedoraにしろ、かなりデスクトップ環境は進歩してきている。もっともWindowsに肉薄できるデスクトップの優秀さを持つものはUbuntu Linuxである。さらにWeb2.0シンクライアントの重要性から、デスクトップそのものの存在価値は薄れてきている。そんな中で、エンタープライズ市場に特化したいRed Hatにとっては一般向けのデスクトップLinuxを改めて開発するメリットは何もないということだろう。というよりも、そのジャンルはすでにFedoraに受け渡している。特定企業向けにカスタマイズされたデスクトップLinuxが必要となるときには、オープンソースであるFedoraをベースにして、改めて開発すればいいだけだろう。「Microsoftとの競合を避けた」ということだが、もはや戦場はデスクトップ市場にはないわけである。