厳戒態勢の中の聖火リレー

 各国でチベット問題での抗議行動のターゲットになっている聖火リレーが日本にもやってきた。チベット問題そのものでの中国への抗議はわからなくもないが、聖火リレーへの妨害の様子のマスコミ報道によって煽られた人間が、便乗して騒ぎが大きくなっている気もする。

聖火リレー、超厳戒態勢に長野騒然 (nikkansports.com)
JR長野駅前大混乱…中国人と日本人が大規模衝突 (ZAKZAK)
中国の「聖火防衛隊」拒否伝える…長野県警 (ZAKZAK) 

 こうまでして儀式である聖火リレーを行う必要があるのかという素朴な疑問もある。厳戒態勢や抗議アピール、これら自体が五輪精神に対する冒涜であるような気がするからである。中国も聖火を防衛するためには手段を選ばないような姿勢だが、五輪そのものは中国の所有物でも何でもないはずである。あえて言えばギリシャのものだろう。「聖火防衛隊」なる人員を主権のある国家に送り込んでまで「防衛」するなどというのはおかしな話である。日本ではさすがに自国の治安上拒否したようだが、当然のことだろう。


 スポーツ人は政治問題には無関係なのだから、聖火を持った人の前で抗議してもしかたがない。結局のところ、マスコミでセンセーショナルに取り上げられることが目的なのだろう。聖火ランナーに選ばれた人たちは、その被害者とも言えるだろう。


 五輪は歴史的にはいつも政治利用されてきたナチスドイツ下でのベルリン五輪のときから、モスクワ五輪ボイコットもそうである。今回、再び中国とチベットの政治情勢の問題のアピールに利用されてしまったということだろう。スポーツに関係する人たちには災難だが、逆に政治思想に関心を持って煽られている人たちには、スポーツや五輪が別にどうなろうとも関係はなく、自己の信条の主張の場でしかないのだろう。