Microsoft Office代替は可能か

 OpenOffice.orgGoogleドキュメントはじめ、Microsoft Officeの代替となるOfficeソフトやWebサービスの存在が、やっとここにきて意識されだしているようである。今日明日に突然切り替わるということはないだろうが、Office代替となるには何が問題になるのだろうか。

無料ソフトはMicrosoft Officeに対抗できるか (ITmedia)

 PCの歴史の中では長いことMicrosoft Officeの独占が続いてきたように感じる。ちょっと公的な文書を作成しようとすれば、Word文書でしか受け付けませんというものまであり、少なくともこちらのPCにOfficeがインストールされていることは暗黙の了解という文書の要求がまかり通ってきたのである。


 Linuxの普及によって、Office互換のソフトが登場してくる。Linuxの上ではMicrosoft Officeは当然動かないから、LinuxでもWord文書を開いたり再編集したりできるようにする当然の要求である。これがOpenOffice.orgへの流れである。
 Webが進行してきて、ブログのようにWeb経由で文書を作成することが可能になってくると、同じような感覚でWeb経由でワープロ文書を作ることができるようになる。これがオンラインOfficeへの流れである。


 問題は旧文書とのファイル互換性と機能の互換性である。込み入った機能で作成されたOffice文書の細部はうまく再現されないなどの問題はあった。その細部が重要な公的な文書などにはOffice互換ソフトは実質は使えない。なので「無料」という点が強調されたとしても、ビジネスの現場では代替は難しいのが実情であった。


 最近になって「フリーのOfficeはどうなんですかね?」という期待の意味を込めた質問をよく受けるようになった。それだけフリーのOfficeの認知度が上がってきたということであろう。ただ往々にしてこうした質問をする人は「二者択一」の考えだけの場合が多い。ブログに始まるWebサービスが普及してきたのもここ何年かのことであるから、その一部であるオンラインOfficeにしろ、まだ進化の途中である。Micosoft Officeの持つ冗長な機能をすべて持ち合わせていないからといって、ダメだということにはならない。


 Microsoftから見れば、OpenOffice.orgなどはOfficeのパクリではないかとも思えるかもしれない。これだけOfficeが普及している現状では、別ソフトとはいえ、操作環境をガラリと変えてしまうとユーザが対応することは難しくなる。Officeに似たように見せかけていることも、乗換えを考えているユーザのニーズに応えるものともいえるだろう。本当にそれが操作性としては最適かどうかは別にしてもである。


 大きな組織になれば、文書を作成するといっても、いろいろなレベルの人がいる。Office機能をバリバリ使った込み入った文書を作ることを仕事としているような人から、自分のように周りが使っているから文書フォーマットを合わせているだけで仕方なく使っているだけの人もいる。多少コンピュータを知っている人なら「Wordの罫線の使い方を究めている」ということにはならない。


 コスト面の考えれば最大の問題は、Microsoft Officeのライセンス数である。これをいきなりゼロにするとなれば、業務に支障をきたすことになる。であれば、Microsoft OfficeをインストールしたPCは外部に出す公文書を作成するための「清書マシン」だと割り切ればよいではないか。現在はどうせ1人1台以上のPCが普及しているから、部署の中で共有するPCにだけMicrosoft Officeを入れておくような運用を考えればよいではないか。実際近年では、PDF文書を作成するためのAcrobatをプリンタに直接接続してあるPCにだけインストールするようなことをしていた。それと同様のことである。もっと昔に遡れば、ワープロ機などは部署の部屋の片隅に設置されていたりしたものであった。Microsoft Officeも同様の立場にして、ライセンスのコストを低減できるのではないかということである。


 一人一人が文書の下書きなどをするには、オンラインOfficeやOpenOffice.orgで十分である。オンラインOfficeなどは不必要な文書装飾機能などよりは文書共有機能の方がはるかに有意である。そうなると問題は、清書に使うMicrosoft Office文書ファイルとの互換性である。ここでも何度も取り上げている、Office Open XMLフォーマットとODFの互換性の問題がある。変換は不可能ではないが、認知度によって実際の運用では混乱が生じるだろう。しかし、Mirosoft Officeの中だけでもすでに、Office 2007と2003以前の間の混乱が生じているわけだから、同じことであろう。


 とにかく、運用にあたっては他に選択肢がないという状況が一番よくない。ネットによって可能性が広がっている時代に、特定のソフトウェアや特定の企業の戦略に左右されるということ自体が不健全なのである。コスト面を重視すれば、使えるものをうまく組み合わせてやりくり算段をできることが重要である。そうして、いずれユーザのニーズに合ったものだけが淘汰されて生き残っていく方が自然であろう。