松井、誕生日に逆転満塁弾

 久しぶりにヤンキース松井の話題である。自らの誕生日に指名代打の1発満塁逆転ホームランでチームに勝利をもたらした。1年目のヤンキースタジアム初登場のときの満塁ホームランが最も記憶に残るだけに、それ以来の刺激的な1発といえようか。

松井秀、バースデー逆転満塁弾放つ!(SANSPO.COM)
逆転満塁アーチの松井秀に「誕生日男だ」と指揮官 (MAJOR.JP)

 今年は2年前の怪我からの守備不安とチーム事情から、もっぱら指名代打ばかりで、なんとなく窓際に追いやられている感じの松井である。そうした危機感もあってか、今季は春先から打撃は好調で、なんと打率でリーグトップを争うほどである。過去5年は3割になんとか到達するかどうかというところであったので、何か打撃スタイルに変化があったのかと思ってしまう。もともと豪快なメジャー打者のフォームに比べれば、松井のフォームは静かで安定しているが、今年は結婚したおかげで、さらに精神的に安定したことが大きいのかもしれない。


 ところが打率とは裏腹に、これまで多かった打点が少なくなり、ホームランもなかなか出なくなっている。なんだか並の打者になってしまったように見える。打率はイチローにまかせて、やはり松井には豪快な1発を期待というのが日本人のファンの心境である。相手も屈指のメジャー投手ばかりなのだから、そうそう思い通りにはいかないだろうが、年齢も変わらないAロッドが豪快な1発を打ち上げるのを見ると、ついついそう思ってしまうわけだ。日本に居たままならば、どれだけホームラン記録を伸ばしていたかなどとは、メジャーリーグが当たり前になった現在では考えもしないが、やはりメジャーの中でも存在感を示すここぞの1発を打ってほしいのである。そのことを忘れかけていた今、その1発が出た。これをきっかけに、再びホームランが出だすかどうかはわからないが、当分はその期待は続くだろう。


 他の日本人メジャー選手と思い入れが違うことは、松井が長嶋監督の事実上、最後の直弟子ということも関係があるだろう。巨人時代はドラフトで松井のクジを引き当てたのは長嶋監督自身だったとはいえ、ただの監督と選手の関係だと思っていた。ところが長嶋監督夫人が亡くなったときに語られたエピソードによって、連日のように試合前には松井が長嶋邸を訪れて、直接熱血の打撃指導を受けていたことを知った。その終了後には、夫人の手作りの昼食もごちそうになり、帰り際には「今日もがんばってね」と声をかけられていたという。長嶋夫妻には、我が子のようにかわいがられていたことが窺われる。


 その長嶋監督の通算本塁打記録の444号には、あと2本だという。もう王監督ベーブ・ルースの記録には及ぶべくはないが、記憶に残る1発をもっと量産してほしいものである。