Yahoo!とGoogleがオンライン広告で提携

 Yahoo!Googleがネットの広告での提携を発表した。ネット広告による収益はGoogleが圧倒的すぎて、もはやどこも対抗できそうもない。後発の検索サイトながら、検索エンジンが優秀だったために、検索分野でトップに踊り出て、その上に「3行広告」みたいなものを連動させたのが、今のGoogleの地位を築いてきたわけだ。そして検索部門では老舗だったYahoo!とは、今回の提携で主客逆転したような印象である。

Yahoo!とGoogle、オンライン広告で提携 (ITmedia)
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 もう10年近く前、Googleが出てきた当初は、Yahoo!検索で"Powered by Google"のように、ロボット型検索の部分をGoogleにアウトソースしていたことがあった。Yahoo!検索結果の6割くらいはGoogleの検索によるものと言われた。それがGoogleが大きくなってライバル関係になると、この提携はなくなり、Yahoo!も独自のシステムだけで検索をやるようになった。Googleに下請けをやらせていた当時は、Yahoo!はもはや検索だけでなく、広くネットに接続するユーザがまず訪れて、いろいろなサービスが受けられるポータルサイトへと進んでいた時期であった。そんなこともあって特に日本では、ブラウザのホームにYahoo!を設定しているケースが多かったと思う。


 ところが検索サイトとしては、すでにシェアで逆転しその差も広がる一方である。そして検索に連動する広告分野の収益でGoogleは他を圧倒する。すでに独占に近いといってもいいかもしれない。Yahoo!Microsoftのこの分野での収益は、Googleに比較すれば微々たるものかもしれない。


 そこにMicrosoftによるYahoo!買収提案騒動である。この場合は、2位で3位で合併したとしても、Googleには勝てそうにもないと誰しも思ったのではないか。またそれが実現するとすれば、ハードウェアメーカーの吸収合併のように、事実上Yahoo!の消滅を意味することになると思われていただろう。Yahoo!内部でもMicrosoftに買収されるくらいなら、それを阻止するためにはGoogleと提携した方がましだという雰囲気になり、この提携に至ることになったのだろう。結果的には、皮肉なことにMicrosoftが提携をプロモートしたようなものである。そしてMicrosoftの方はYahoo!との買収交渉に完全に終止符を打つことを表明している。Yahoo!の一部の「物言う株主」は、まだYahoo!Microsoftの買収に応じなかったことを不満として株主訴訟をちらつかせてはいるが、日本の村上ファンドみたいなもので、ネットの世界の動向の空気を読めない人くらいにしか思われていないだろう。


 Yahoo!Googleのネット広告と提携するとは、一般ユーザのGoogle Adsenseみたいに、Yahoo!の検索結果のページに、Googleから提供される広告が連動して表示されることになり、それがクリックされた分に応じてGoogleからYahoo!に報酬が支払われるという仕組みだろうか。つまりYahoo!の収益の一部がGoogleから得ることが期待されるということだろう。Yahoo!Googleの広告事業の一部の下請けを行うようなものである。Googleにとっては、自サイトの検索トラフィックが増えるわけではなく、大口のAdsenseユーザが加わったようなものである。しかしそれ以上の意義は、Microsoftの買収を阻止することが目的だったわけだから、すでにその目的は達成されたといってもよい。Googleは特に収益が上がらなくても損にはならない提携であろう。


 残るは、予想されていたように独禁法に抵触しないかというクレームがつくことである。すでに両者ともそれを予期して手は打っているようである。実際に裏で議員に働きかけたりロビー活動をしてクレームをつけそうなところは、業界ではMicrosoftくらいしか見当たらない。他で検索で対抗できるところがないからである。それも自ら撒いた種ともいえるわけだから、どうしようもないとも言える。