球面コンピュータの可能性

 「四角い頭を丸く」考えてみようではないが、Microsoftにもこんな遊び心半分のような開発があるのかと思わせられる球面コンピュータ「Sphere」の研究である。

MSの球面コンピュータ「Sphere」--研究者が語る将来性(CNET Japan)

 コンピュータ本体が球面というより、入出力のインターフェース部分が球面だけのタッチパネルで操作するという発想である。大きな地球儀みたいな球を回しながら、何やら球面に映し出される画像や映像を見ながら操作を続けていく。ちょうど預言者が水晶の玉をこすりながら、未来の様子を映し出してみせるかのような趣である。
 コンピュータはキーボードとマウス、あるいは周辺デバイスを接続して操作するものという固定観念しかない人には、何の目的に使えるのかという疑問しか湧かないかもしれない。確かに現状のコンピュータに取って代わるというものとは思えない。


 しかし入力装置としてのカメラ1つとっても、全方位撮影型のポール型カメラなどもありそうだし、逆に出力がボール型のものがあってもよさそうである。平面的な文書をわざわざ球面に映して読む価値はないだろうが、映像によっては球面を移動させながら見ることに価値のあるケースもありそうである。Google Earthではないが地球儀が一番イメージに合うが、それだけでもあるまい。


 グラフィックスを球面に表示するには、数学的には球面三角法が必要になる。線分は球面上の弧の曲線(測地線)だし、三角形に結んでも内角の和は180度にはならない。面積も容易ではない。昔、球面三角法の本をパラパラと見たことがあるが、煩雑な三角関数のオンパレードである。そうした難しいことは抜きにしても、巨大なトラックボールをこすっていくだけで、いろいろな画面が出ては消えたりするのを眺めてみると、何やら未来型のコンピュータの可能性を感じさせる。直接すぐに何かに応用するというよりも、まずは固定観念を捨て去ることの試みが一番の目的なのではないかとも思える。やはり四角いものを丸くしてみると、どんなことが見えてくるのかという研究だろう。しかしMicrosoftに対する固定観念のイメージとは、やはり釣り合わない気がする。