五輪柔道の変遷

 北京五輪の競技が開始されたが、日本にメダルが期待される柔道は、なかなか厳しいスタートとなったようだ。野村忠宏が五輪3連覇してきた60キロ級の1回戦で平岡が敗退し、3位決定戦にすら進めない完敗だった。女子では、誰しもが金メダル3連覇を期待していた谷亮子が、準決勝でまさかの敗退で銅メダルとなった。


 谷の場合は、やはりかつての技のキレに陰りが出てきて慎重になっているように見えた。それが審判には消極的にとらえられ、わずかな差の判定負けにつながったようである。いずれにしても紙一重、厳しい世界でよく5度の五輪出場、足掛け16年もトップの座を保ち続けているものだと思える。初めのバルセロナ大会出場の時は最年少だったのが、今回では相手が年下ばかりになっていれば、慎重にならざるをえないのも無理からぬところだったろう。


 久しぶりに柔道の試合を見た気がするが、特に外国選手の技のスタイルが随分変わったように見える。かつては柔道本家の日本に対抗するために、力技中心で組んでも腰を引いて突っ張ったままで優勢勝ちを狙うスタイルだった時代もあったと思う。
 ところが今回の選手らは、組むことすらせずに、みな「朽木倒し」だとか「諸手刈り」だとか、レスリングのタックルのようにカウンターで足を狙うことばかりである。身長は日本人よりも高いにもかかわらず、背の高い方の男が身を屈めてタックルを狙う。これが国際柔道かと思うほど、日本の柔道とは異なるものに見えた。足技などはほとんど使わないようである。一発勝負に賭けるとこういうスタイルになっていくのだろうか。


 日本人選手も世代が代わってきている。新しい世代の新しいスタイルがあってもよいだろうが、必ず1本勝ちとは言わないまでも、本来の柔道らしいスタイルの勝ち方ができるような選手の登場を期待したいものである。