柔道・内柴五輪2連覇

 再び五輪柔道の話題。内柴正人アテネ五輪に続き五輪2連覇で、北京五輪の日本に初の金メダルをもたらした。66キロ級とはいえ、160cmと小柄な内柴からすれば「8人は自分よりも強い選手がいた」という言葉は、あながち大袈裟な話にも聞こえない。


 意外なことに30歳での柔道金メダルは、日本人選手では史上最年長だそうである。それだけ、柔道での世界に通用する選手寿命は短いということだろう。北京五輪出場がならず引退した井上康生にしろ30歳前だった。不振の時期は当然、怪我や故障とも紙一重であろうから、30歳まで第一線を維持すること自体が至難の業といえるのだろう。


 偉業を達成すれば、そこまでの苦労や努力がクローズアップされるが、敗れた選手にしろ、世界レベルまできている選手で、そうした苦労や努力がない選手は皆無といってよいだろう。これは他の競技でも全く同じである。ただ4年に1度の特別の大舞台で、勝者と敗者の明暗を分けるのは、ほんのちょっとした差なのかもしれない。1回戦で敗れた選手と内柴の差も、ちょっとしたものに過ぎないかもしれない。


 内柴の柔道の常に前に出るスタイルが、そのちょっとした差を生み出したといえるかもしれない。身長や腕力の差をものともせず、積極的に仕掛ける姿勢に正統的な柔道が感じられた。時間切れの優勢勝ちを意識して、あからさまに相手の仕掛けから逃げ回るような外国人選手とはえらい差であった。


 ところで女子の中村美里にも感心した。勝っても負けてもほとんど表情を変えない。大舞台でもほとんど緊張もしないという。表情の起伏をとらえたいマスコミ泣かせともいえるだろう。今時の若い女性にない、内面の強さが感じられた。ルックスも良いし、漫画の「柔」のイメージは彼女の方が近いかもしれない。新しいタイプの女三四郎の今後に期待である。