ボルト世界新で短距離2冠

 ジャマイカのウサイン・ボルトが予想に違わず、100mに続き200mでも世界新記録を出して金メダルを獲得した。陸上競技史上では驚異的なことである。

ボルト19秒30の世界新で2冠 (nikkansports.com)

 100m決勝はLIVEで見ていたが、正に人類の歴史的瞬間を見届けたような気持ちになった。陸上の100mで、まさかこんな記録(9秒69)がありうるなどとは、夢にも思っていなかったからである。今でも計時システムの誤りではなかったかと疑うほどである。

 「世紀の欽ちゃん走り」などと国内でしかウケないような表現もされていたが、それだけ100mであるのに、あまりにも余裕のゴールをしたように見えたのに、結果は驚異的な人類の歴史を塗り替える記録だった。最後まで必死に駆け抜けていれば、9秒5台まで出たのではないかと思わせるほどの走りだった。

 そのボルトがむしろ得意な200mでも世界新記録を出すことは、当然期待されたことであったが、やはりその通りになった。ただ19秒30という記録は世界記録を2/100秒縮めたが、100mの更新に比べれば小さいものとも思える。200mはコーナリングもあるから100mのようにもいかないのかもしれない。


 陸上の短距離は走るだけという単純な競技だけに、逆に難しい競技ともいえるだろう。長距離と違って、ほとんどは才能が物を言う世界である。たとえば1度レースを行って順位が付いて、後から何らかの原因で再レースを行うことになったとしても、結果は1位から8位まで、全員が全く同じ順位になることだろう。それだけ番狂わせが生じにくい競技である。
 記録を伸ばすためには、どんな要素が必要となってくるのか。想像だが、北京でのジャマイカ勢の躍進は、地中海に面するジャマイカの気候でトレーニングしてきたことと、北京での気候との差にあったような気もする。つまりジャマイカでの気候に慣れていれば、北京の気候ではコンディション的に快適に走れたために、爆発的な力を発揮できたのではないかということである。


 女子も含めて、ジャマイカはどうしてこれほど陸上の短距離に強くなったのか、冗談で「あまり金をかけずに強化できるスポーツだからジャマイカ」などと思っていたら、どうやら本当にそうらしい(笑)。ボルトは貧しかった時代にシューズが買えなかったので、裸足で大会に出場して優勝したこともあったという。


 北京五輪は、衝撃度で言えばボルト、フェルプス、北島の順だったろうか。中国の過剰なまでの五輪に対する入れ込みようを差し引かなくても、やはり主役は選手個人であると思わせるのに十分であった。こればかりは中国によるフェイクではあるまい。