ネットによる五輪放送の実現

 開催前からいろいろな問題で騒がれた北京五輪だが、競技が始まってみると、やはり選手のひたむきな全力プレーに見入ってしまった。今年は曜日の関係もあり盆期間が長く取れたので、実家のBSハイビジョンなどで、歴史的瞬間をライブ映像で多く目撃することもできた。
 五輪放映は、まさに全世界に同時発信される典型的コンテンツである。これこそネット向きと思えるが、やはりネットによる配信の増大、特にYouTubeはここでも採用されていたようである。

ネットのオリンピック放送、視聴件数はアテネの30倍(ITmedia)
IOC、YouTubeに北京五輪チャンネルを設置(ITmedia 8/6)

 テレビの視聴率や視聴者数ならば、各国の放送の視聴率から簡単に割り出せるそうだが、ネットの視聴件数となると伸びていることは当然だろうが、そう簡単に評価できるものではないだろう。NBCのビデオクリップへのアクセスがアテネ五輪のときの30倍だったといっても、それは一部メディアでの評価に過ぎない。特に2004年当時と現在で大きく異なるのはYouTubeの存在である。


 日本では見られないそうだが、VODの独占放映権が提供されていない国向け144カ国にYouTube専用チャンネルが設けられ、ハイライトシーンが見られるようになっているという。いくらテレビで見られる国とはいえ、ネットでのハイライトシーンも見てみたいものである。そう思って国内のYouTubeから「北京五輪」で検索してみたが、一部を除いて名場面のビデオは見つからなかった。やはりテレビからのクリップなどは投稿できないか削除されるからであろう。もしYouTubeチャンネルが全世界からアクセス可能だったら、30倍どころの騒ぎではなかっただろう。


 五輪こそ独占放映権が大きいわけだが、内容的には「平和の祭典」を謳っているのであれば、これこそ全世界にハイライトだけでもよいから、ネットで無償で提供するべきものではないのかとも思う。五輪は特定の事業者が作ったコンテンツではない。各国のあまり利害とは関係のない選手やそれを支える関係者らが協同して作り上げたものだといえるからである。戦争反対のデモのニュースを繰り返し流すよりも、よほど世界の人々に訴えるものは大きいだろう。


 五輪のネット配信の大きな可能性は、とりあえずは放映権という壁に阻まれたともいえるわけだが、各国の事情はあれ、今後はネットがテレビの方を飲み込むような形で、おそらく関係の逆転が起きていく気がする。それが次の五輪か、次の次(東京五輪??)かどうかはわからない。しかしYouTubeの勃興のように、案外早い時期にそうなることだろう。