Googleとプライバシー

 Googleはパケットの中身を盗み見ているのではないか?という疑問が投げかけてられている。これはある意味、事実であり、Googleサービスの原理的な問題でもある。ただ、どこまでがプライバシーの侵害に相当するのか、法律的な解釈は難しそうである。検索広告の独占的地位を確立しつつあるGoogleに楔を打ち込むには、かつてのMicrosoftに対する独禁法のように、法的な手段を考えなければならなくなっているということだろうか。

Googleがパケットをのぞき見ている?(ITmedia AnchorDesk)

 一般にパケットキャプチャあるいはスニフィングを行うと、ネット上に流れるパケットの内容は暗号化されていない限り、すべて解析することが可能である。システム管理者にとっては常識であり、深刻なネットのトラブルに遭遇したような場合にはパケットを解析してまで、その原因を追求することもある。そのツールもフリーソフトとしていろいろあるから、たとえば自分のPCに出入りするパケットを解析してプロトコルの勉強をすることなどにはうってつけである。
 これを悪用してサーバー管理者などが、サーバーに出入りするパケットを収集して他人の機密情報を得たとすれば、国によって法律を違うだろうが、訴えられれば立派な盗聴による犯罪になるだろう。ただそれを立証するのは難しいかもしれない。近年は暗号化が普通になっているので、昔のようにメールの文面がパケット内部からそのまま読めるようなことは少なくなったが、セキュリティの落とし穴はまだまだいろいろありそうである。


 Googleの検索広告の技術は、まさにこのパケット解析の危険スレスレというわけだろう。Googleのキーワード検索やGmailのページに刷り込まれる広告は、明らかに入力したキーワードや表示文書のキーワードをマッチさせたり、関連する広告を推理させるデータマイニングを行っているように見える。詳しくはわからないが、ディープパケットインスペクションとは、単なるマッチングだけでなくユーザの各種の履歴なども調査して、それを表示する広告に利用しているということなのかもしれない。つまりパケット情報を積極的に利用してマーケティングを行っていることになる。当然ながら、Googleの場合、これらがすべてサーバーアプリケーションによって自動化されているわけで、特定の人間が意図を持って特定のユーザの情報を得ているわけでもない。


 これがプライバシーの侵害に相当するか解釈は難しいが、法律などは社会情勢によって変わっていくものだから、Googleが強大になっていけば、それを制限するような法律に改正されていく可能性はあるだろう。アメリカの場合は大統領選にも関わり、共和党か民主党の政権かによっても影響される、まさに政治問題にまでなりそうだという。


 ユーザレベルでみれば、特定の人間にプライバシーを侵害されるということではないものの、「何か気持ちが悪い」「タダより怖いものはない」「自分の行動がGoogleによって監視されている」という感情を抱くことになるかもしれない。企業レベルであれば、たとえば有償サービスのGoogle Appsに広告を入れるかどうかは、契約内容で明らかにすることができるが、個人ユーザでは自由はきかない。自らサーバー運用する労力やセキュリティに対する不安とのバーターである。


 今後はクラウドコンピューティングによって、ますますサーバー運用は、GoogleIBMなどにデータごと預けてしまうということが常態化することになる。そうした時代に、現在のままのGoogleの手法がそのまま通用するかどうか、これはGoogleばかりではなく、ネットから利益を得る根本原理の是非が問われているようである。