IE 8 β2がリリース

 Firefox 3 に対抗して、8月にはInternet Explorer 8 もリリースされるのではないかと思われていたが、どうやらやっとβ2のレベルのようである。予定通りにリリースされないのはMicrosoftのいつものことだが、なにせシェアが一番大きいIEの動向によって、ブラウザの標準の方向性が左右されることにもなるので、関心を持たざるをえない。プラットフォームとしてはVistaよりも、実質ブラウザの方が重要になっているといえるからである。
 さすがにβ2でわざわざインストールしてテストしてみようとまでは思わないが、新機能その他が報告されている。ベータ版ということを差し引いても、やはりいろいろと問題がありそうである。

IE 8 β2を試してみた(ITmedia AnchorDesk)
IE 8のβ2はまだまだ荒削り
MS、IE 8 β2をリリース(ITmedia News)

 目新しさとしては、プライバシー機能の設定が大きいようである。履歴やクッキーを残さない「InPrivate Browsing」、それらを後から消去できる「Delete Browsing History」、関連サイトへのデータ受け渡しをブロックする「InPrivate Blocking」などがあるという。FirefoxOperaがこれらの機能を拡張機能として実現しているのに対し、IEでは標準機能として組み込むことになるようである。
 確かにクッキーやスパイウェアの関係が微妙なものになっている現在、ブラウザがブロックしてプライバシー保護に働くようになるのは、今後の標準的な流れだろう。いちいち気にしながらサイトにアクセスするのも困りものだからである。


 またプライバシーといっても、外部と内部の両方の問題があるだろう。ネットを通じて外部にプライバシーが漏れないようにするのは当然として、内部でも職場なり家庭でもプライバシーが問題になる場合はある。PCを共有せざるをえない場合、お気に入り、サイト閲覧履歴、パスワードの記憶などは消しておきたいものである。ただ、人の中でも公と私の区別があいまいになりがちな場合は多い。ノートPCを公の場所に持ち込むようなときもそうである。そうした場合、うっかりしたプライベートな記憶は残しておきたくないものである。こうしたことに迅速に対応するか、系統的にプライバシーを確保しながらブラウジングを行えることが、常識的なことになっていくだろう。


 タグブラウザ機能についてはFirefox以来、ブラウザの標準となったが、IE8ではさらにタグをクループ化できるという。タグを10枚、20枚・・と開くことになれば、内容によって必要なタブを見つけながら作業を行うには効率的になるかもしれない。
 またクラッシュ対策とページ復旧の新機能が追加されたことは、これまでのIEの不安定さからすれば大きい。いくらタブブラウザで同時に複数のページを開けても、クラッシュしてIEが終了してしまえばどのページを開いていたのか、にわかには判らなくなる。実際IE6のときは、よくクラッシュしていたので複数ページがわからなくなっていた。Firefoxなどでは、すでに復旧機能は標準機能だったのでやっと追いついた形である。


 やっとIE 8で、全般的にFirefoxなどの機能に追いつくことになるかという段階であるようだ。これが示すことは、機能的にはもはやFirefoxが主導し、シェアが一番多いIEがこれに追随するという関係になっている。ActiveXのように、Microsoftが提唱するものは、むしろ標準ではないというのがこれまでの歴史であるから、こういうことになるのだろう。


 しかし一番の問題は、IE自体のバージョンによる互換性である。Windows XPが使い続けられ、Vistaが普及していないことから、いまだにIE6のシュアが多い。まだVistaを導入したところから徐々にIE7に移行している段階である。そこにさらにIE8が出現する。IE6は寿命が長すぎて、IE7やIE8と互換性がないことは当然であるものの、IE7とIE8の間にも互換性がなく、そのためわざわざIE8にはIE7互換モードなる機能もあるという。これはサイトによって、IE7互換モードでなければ閲覧できない場合があるからだという。これはサイトの問題より、やはりブラウザの問題だと思える。


 IE8が正式にリリースされれば、現実の市場では3つのバージョンが混在することになり、これはかなり混乱しそうな気がする。あるバージョンでは普通に見えるサイトが、他のバージョンではうまく見えないなどということになれば、結局初めからFirefoxで見た方がよいということになるからである。個人のPCならば、IEだけでなく、Firefoxだ、Operaだ、Safariだと自由にインストールしておくこともできるが、職場や公共の場所のPCではそうもいかないし、設定を勝手に変えるわけにもいかないケースも多い。IE特定のバージョンだけで作業をしなければならないことが普通である。


 Microsoftにその解決を求めるというより、ユーザ側の手っ取り早い解決策は、結局は「Firefox3をインストールしてくれ」ということになるのである。