MozillaはGoogle Chromeリリースを歓迎

 何の前触れもなく秘密裏に開発が進められてきたのかもしれないGoogle Chromeだが、発表およびβ版の配布から1日たっただけで、ネット上では驚きをもって、ちょっとした騒ぎになっている。早くもいろいろな人がいろいろな気の早い予想もしていて、百家争鳴の状態である。ネットの中でも誰でもが毎日のように利用するブラウザとGoogleの話題であるから当然といえば当然ではある。
 そんな中で、最も気になるはずのFirefoxのお膝元のMozillaは、冷静にGoogleの新ブラウザのリリースを歓迎するとしている。

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 MozillaGoogleの3年間の提携延長が決まってから2日後のChromeの発表であるから、当然Mozilla側には、このプロジェクトの存在は事前に知らされていたことだろう。その上で、FirefoxChromeの位置づけも議論されたことには違いない。両者はFirefoxを関しての技術者の交流もあり、それは今でも続く。少なくとも今後3年間は、この協力関係は続いていく。そうしたことからMozillaにとっては折込済みのことであるということなのだろう。3年後にはどうなるかは、当事者を含めてまだ誰も予想の付かないことだろう。メジャーリーグの有名選手が3年間の大型契約を更改したようなものである。


 ただ市場の方は大きく反応している。いち早くChromeの機能、操作性を既存のブラウザと比較し、その優劣とシェアの予測をしようとする。特に Chrome vs IE8 、Google vs Microsoft の構図として捉えたがる。まだChromeは荒削り、IE8の方がよいなんてのもある。


 もちろん対Microsoftは避けられないことだろうが、Googleとしてはいつものようにオープンソースソフトとして公開し、いつまでもβ版のままで、徐々にいつのまにかバージョンアップするという手法を取る。Chromeの利用契約条項にも明記されているという。MicrosoftIEとは初めから同じ土俵で勝負しているわけではない。同じようなことは、たとえばOfficeソフトであるGoogle Docsについても言えた。そしていつのまにか、既存ソフトや既存サービスを脅かす存在になっているのである。


 オープンソースという点では、バッティングするのはむしろFirefoxである。そしてGoogleは同時にそのスポンサーでもあり続ける。現状では無理に二者択一と考える必要はなく、開発ポリシーに沿って良い意味での競争を続けることによって、ブラウザ全体のレベルアップが図られるという期待もある。IEによるシェアの独占が続いた時期は、ブラウザの進歩が停滞した時期とも見られるのだろう。今後それぞれのブラウザの使用目的や使用環境によっても役割が分かれてくる可能性もある。Google Apps などのビジネス用途ではなおさらである。


 両者に共通するキーワードには、オープンソースの他にJavaScriptがある。Netscapeオープンソースの遺伝子を受け継ぐFirefoxと、Google Mapsに始まるWebサービスAjaxという形でJavaScriptを見事に復権させたGoogleは、新しいブラウザの鍵としてJavaScriptの処理効率を重視している。このへんはブラウザ全体の進歩に貢献することになるだろう。IEにしろ、やっとIE8で初めてJavaScriptに標準で対応したくらいだからである。いずれにしろ、ブラウザだけを切り取って優劣を論じてもあまり意味はないだろう。Webサービス全体のプラットフォームとして利用されていくとき、トータルとしての評価が問題になることだろう。